2024年01月19日(最終更新:2024年01月22日)
不動産を購入するにあたって、当該物件の公募価格が妥当であるかどうかは、プロでないと見極めるのが難しいです。今回は、不動産価格を算出する方法のひとつ、収益還元法について詳しくみていきます。その際に、重要な指標となるキャップレートについても深掘りしていきましょう。
不動産価格の算定方法は、積算法、取引事例法、収益還元法の3つがあります。
まず、積算法とは、「土地の価格」と「建物の価格」を別々で計算し、合算する方法です。土地の価格は、「公示地価(あるいは基準地価など)」×「土地面積」で算出し、建物の価格は、再調達価格×延床面積×残耐用年数 ÷ 耐用年数で算出します。再調達価格とは、簡単に言えば、対象物件と同等の建物を新しく手に入れるために必要な価格です。
取引事例法は、対象物件と類似した物件の取引事例を参考にし、その後、対象不動産の特有の事情による補正や取引時点での時流による修正等を行い、価格を算定する方法です。
そして最後に、収益還元法は、1年間の純収益(賃料―経費)を「還元利回り」で割って、不動産価格を求める方法です。
以上、3つの算出方法を確認しましたが、収益をあげるための不動産である投資用不動産では、収益還元法を用いるのが一般的です。
さて、計算式に出てきた「還元利回り」とは何でしょうか?一般的には、「キャップレート」と呼ばれるものを用います。キャップレートとは、投資家の不動産投資における期待利回りを示したものです。
2023年11月27日に日本不動産研究所より「第49回 不動産投資家調査」が発表されました。本調査は、投資用不動産の利回りや投資家の投資意欲を調査したもので、半年に一度公表されています。
出典:一般財団法人 日本不動産研究所「不動産投資家調査」
キャップレート(=期待利回り)が下落傾向にあるのが分かります。実際に、ファミリータイプの賃貸住宅は、本調査統計開始史上最も低い数値となりました。
ここで、キャプレートの理解を深めるために、収益還元法の計算式を詳しくみていきましょう。キャップレートも利回りです。利回りというと、通常は、年間賃料(純収益)÷不動産価格で算出されます。
一般的に、住宅賃料は市況等に左右されますが、短期間ではそれほど大きく変動しません。そこで、賃料やその他の要因が一定だとすると、キャップレートが低下しているということは、不動産価格が上昇しているということを意味します。
期待利回りが低下しているということは、「利回りが低くても投資したい」と思っている人が増加していることをこのデータは示しています。つまり、不動産投資市場の過熱感が高まっているということです。首都圏の不動産投資市場においては、不動産投資ブームだけでなく、さらに、海外投資家からも注目を集めており、投資熱が高まっていると言えます。
また、今回の調査結果では、ワンルームとファミリーの期待利回りが5年ぶりに同水準になりました。不動産投資というとワンルームの印象が強いですが、ファミリータイプへの需要も期待利回りに反映される結果となっています。
今回は、不動産投資において重要な指標のひとつであるキャップレートについてお伝えしました。投資用不動産を購入する際は、不動産の価格や利回りで判断してしまいがちですが、それだけで投資判断をするのは危険です。キャップレートについても理解を深めていきましょう。
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