2018年09月13日(最終更新:2023年06月01日)
不動産投資をするか否か、その物件を購入するか否かは、感覚や情などで流されるのではなく、全て数字で判断しなければなりません。以後、3回に渡って不動産投資で重要な指標についてお伝えしていきます。今回は、キャッシュフローツリーについてです。
キャッシュフローツリーとは、お金の流れを追った表のことで、不動産投資において実際手元にいくら残るのかを表すものです。具体的には、年間収入から空室などのリスクや諸経費、ローン返済などを差し引いて算出します。
このキャッシュフローツリーでの計算も投資判断の重要なモノサシの一つと言えます。
キャッシュフローツリーは、以下のような流れで計算していきます。
詳細にみていきましょう。
満室時の年間家賃収入です。重要なのは、現在の賃料ではなく、エリアの家賃相場などを鑑みた“現実的な”賃料にすることです。特に築浅の物件は注意が必要です。
第2回「家賃下落リスクに備えるにはタイミングとエリア」でお伝えした通り、新築物件は新築プレミアムがついているので、新築からずっと同じ入居者が入っている場合などは、賃料が高い設定のままの可能性が高く、その人が退去すると新築プレミアムが欠落し、家賃が大きく下がってしまう危険性があります。
総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国の賃貸住宅の空室率は、約19%です。これは、あまりにも古い物件なども含まれた数値ですので、稼働している賃貸住宅の空室率でいうと、もう少し下がると思います。
また、空室率はエリアによっても大きく変わってきます。ちなみに、同調査によると東京23区は、15.7%です。キャッシュフローツリー作成に際しての空室率ですが、まずは、不動産会社や賃貸管理会社に現時点での管理物件の空室率をヒアリングするようにしましょう。
それをまずは、中間のシナリオとし、そこからマイナス10%程低く見積もった空室率を「空室率の底」と考えて、それぞれでシミュレーションを作ってみるとよいでしょう。
未回収損は、家賃滞納で回収が困難になるリスクのことです。日本賃貸住宅管理協会の『賃貸住宅市場景況感調査(2017年度下期データ)』によると、首都圏の滞納発生率は月末1か月時点で2.5%、月末2か月で1.4%となっています。
潜在総収入から空室率・未回収損を差し引いたものが、実行総収入(EGI)です。実行総収入は、実際に有効な収入、つまり、物件の本来の年収の最大値と言えます。
運営費は、管理費や修繕積立金、管理委託料(自主管理を除く)、そして、固定資産税、都市計画税などのことです。ここで注意が必要なのは、修繕積立金です。
修繕積立金が安すぎると将来的に改修費が足りずに、改修時点で多額の修繕金を徴収されたり、また、管理組合で不足額を借り入れたりすることがあります(=この借入金の返済は月々の諸経費に上乗せされる)。したがって、事前に「重要事項調査報告書」などで、修繕積立金がどれくらい貯まっているのかをきちんと把握しておくようにしましょう。
実行総収入から運営費を差し引いたものが、営業純利益(NOI)となります。
そして、借入がある場合はNOIから返済額(年間返済額(ADS))をマイナスします。その結果が、税引き前キャッシュフロー(BTCF)となるわけです。
不動産投資の目的にもよりますが、キャッシュフローがプラスになるか否か、そして、どれくらい手残りがあるかは、やはり不動産投資において重要です。
シビアにキャッシュフローツリーと向き合い、適正に投資判断をしましょう。
収益不動産ONLINE編集部
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