専門家コラム

【不動産の税金_4】修繕費と資本的支出

【不動産の税金_4】修繕費と資本的支出

不動産を取得し、いざ投資がスタートしてしまうと、投資期間中に税務に絡んだ大きな問題というのはそうそうあるものではない。税理士などの専門家の知恵を借りたいような問題が生じるのは、大きな出費があったときや売却のときくらいではないだろうか。
その大きな出費があったときの問題と言うのが、大規模なリフォームを行ったときの会計・税務処理である。さらに、投資物件が古くなってくると当然にリフォームが必要になってくるため、こうした悩みや相談も多くなる。今回は、このリフォーム時の費用の取り扱いについて考えてみたいと思う。
 

1.リフォームを行ったときの会計・税務処理

リフォームを行った場合には、税務上、「修繕費」として処理をするか、「資本的支出」として処理をするのかの判断を行わなければならない。
修繕費として処理する場合には一括で費用処理ができる一方、資本的支出として処理をする場合には一度、資産計上をして税法に定める耐用年数に応じて減価償却費を通じて費用処理をすることになる。
修繕費処理をするか、資本的支出の処理にするかの違いは、最終的にはどちらも経費になる点では一緒だが、修繕費の場合はその年度の利益の圧縮が可能でその年度の節税につながるため、多くの場合は修繕費処理を望むケースが多い。
 

2.「修繕費」と「資本的支出」の違い

「修繕費」とは、読んで字の如しで「修繕」。壊れたものを元の通りに直すことをいう。税法の通達上の定義では、「固定資産の修理、および改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や現状回復のために要したと認められる部分の金額」と定められている。
投資不動産に当てはめると、主に「破損箇所の現状回復工事や、テナント入れ替え時の同グレードによる原状回復工事、建物を維持管理するために不可欠となる定期的な工事(主に3年周期程度)、経年劣化した設備の同グレードによる交換」が該当するだろうか。これらの支出であれば金額の多寡にかかわらず、一括で費用処理することが可能である。
 
一方、資産価値が上昇するような工事の場合は「資本的支出」として処理をし、減価償却資産となる。壊れたところを直すだけではなく、資産の耐久性を増すと認められる部分の金額や、資産価値を高めるような支出がこれに該当する。
 
つまり、修繕費と資本的支出の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものである。つまり、どんな高額なものであったとしても、現状の回復にとどまるものであれば修繕費なのだ。
 
とは言え、何か参考となるような事例がないと判断しづらいだろう。そこで、過去に、修繕費か、資本的支出かで争いになった事例を例に挙げてみたいと思う。
国税不服審判所では、修繕費について議論された以下の2案がある。これを参考にすれば、おおよそのイメージが付くのではないだろうか。
 
鉄筋コンクリート造り店舗共同住宅の外壁等の補修工事に要した金員は修繕費に当たるとした事例(平成元年10月6日裁決)
 
納税者が修繕費として処理をしたものを課税当局が資本的支出として否認をし、その後不服審判所において修繕費であると認定した事例だ。
 
≪ポイント≫
建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入工事等は建物全体にされたものではなく、また、塗装工事等は建物の通常の維持又は管理に必要な修繕そのものか、その範ちゅうに属するものであるから、これらに要した費用は修繕費とするのが相当である。また、外壁天井防水美装工事は、補修工事に伴う補修面の美装工事であって、塗装材として特別に上質な材料を用いたものではないことが認められるから、これに要した費用も修繕費とするのが相当であると判断したものである。
 
賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事に係る費用は、当該マンションの価値を高め、その耐久性を増すことになると認められるから、修繕費ではなく資本的支出に該当するとした事例(平成26年4月21日裁決)
 
≪ポイント≫
本事例は、新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用が、賃貸用マンションの通常の維持管理のための費用、すなわち修繕費であるとは認められず、新たにシステムキッチン及びユニットバスを設置し、台所及び浴室を新設したことによって、当該マンションの価値を高め、又はその耐久性を増すことになると認められることから、その全額が資本的支出に該当するとしたものである。
 
 
このように、過去の判例や、通達等から簡単に修繕費と資本的支出の例示を大別すると以下のようになる。
 

修繕費と資本的支出の代表例

 

3.資本的支出に該当した場合のその後の処理方法

修繕費に該当すれば、その年度において、一括費用処理をして終わりなので良いが、資本的支出に該当した場合には、減価償却費を通じて費用処理をしていくことになる。では、どのように減価償却費を計算するのだろうか。
 
結論から申し上げると、その資本的支出の金額は、資本的支出の対象となった既存の資産の減価償却資産と種類及び耐用年数を同じくする別の新たな資産を取得したものとして、その取得と耐用年数に応じて償却を行うことになる。
例えば、法定耐用年数47年で償却しているマンションに資本的支出を行った場合には、そのマンション本体と同じ種類及び耐用年数である47年の耐用年数を用いて減価償却を行う。
 
では、中古物件に資本的支出を施した場合はどうなるのだろうか。税法上の定めに従えば、中古物件本体と種類および耐用年数を同じくする資産を新たに取得したものとして取り扱う。つまり、ここで注意すべきは、資本的支出部分の減価償却費については、法定耐用年数に拠るのではなく、中古物件が使用している中古の耐用年数を使用することだ。
例えば、鉄筋で法定耐用年数47年で築20年が経過しているマンションを取得して、中古の耐用年数31年を採用している場合において、このマンションに対して外壁の資本的支出を行ったときは、この外壁工事は新たな個別資産の取得として取り扱うが、減価償却費の計算上、用いられる耐用年数は、法定耐用年数の47年ではなく本体が採用している耐用年数と同じ31年ということになる。
ただし、中古物件を購入した後に、再取得価額の50%超の資本的支出を行った場合には、もはや、新品の資産を購入したものと同じと考えて、その資本的支出の耐用年数については、本体の中古の耐用年数を使用することはできずに対象資産本体の新品の法定耐用年数を使って減価償却費を計算することになる点は留意が必要だ。
 

4.リフォームの必要性

では、少々会計と税務を離れて、投資という観点からリフォーム費用について見てみたいと思う。
修繕やリフォームなどの費用は、周期的に生じる必要経費でその支出は致し方ない。と、諦めて終わりにするのではなく、リフォーム費用について、必ず費用対効果や利回りを考えなければならない。投資不動産を最初に購入する時にそうであったように、リフォーム費用についても投資利回りを検討する必要がある。
 
例えば、昔はワンルームマンションでは当たり前だった風呂、洗面所とトイレが一体になったユニットバスも今では敬遠されることが多い。また、それが理由で賃料が低く設定されている場合もある。それに150万円をかけて風呂とトイレを別々にするリフォームを行ったところ、賃料を月に2万円UPすることができたとき、約6年ちょっとでリフォーム費用を回収することができる(賃料UP2万円×12ヶ月×6年=148万円)。その後は純粋な利益につながり、利回りの向上に繋がるかもしれない。更には、和室を洋室にリフォームすることで、月に1万円の賃料UPができるとする。賃料を1万円UPさせるためには、幾らまでならリフォーム工事に費用をかけても問題が無いのか?といった検討も必要だ。
 
このような検討をした結果、賃料UPは見込めるが、想定以上に高額なリフォーム費用が発生してしまったり、リフォーム費用の回収に時間がかかってしまったりして、場合によってはリフォーム工事を躊躇してしまうケースが出てくるかもしれない。
ただ、そこでリフォームを諦めるのではなく、さらにもう一歩先まで考えてみる必要がある。例えば、将来的にその不動産物件の売却を考えているのであれば、賃料UPができたならば、その不動産物件の利回りは向上することから、不動産の売却金額に跳ね返ってくるであろう。リフォームをして利回りが向上したことで売却金額に与える影響は決して無視ができないほどの大きな金額になるはずだ。
 
こうした前向きなリフォームは、リフォームに迫られていないような投資家の方でも、それを実施したことによる賃料の上昇分の利回りを計算し、当初の物件購入時の利回りよりも上昇するのであれば、積極的に考えてみるべきだ。
 
一方で、こうした検討の結果、リフォームを行わない。という選択肢もある。その選択肢の判断もやはり、利回りだ。例えば空室のリフォームをして新しい賃料の利回りを検討したときに、当初物件購入時の利回りよりも下がるような場合、リフォームを行わずに賃料を下げて空室を埋める、という判断もある。ただ、売却を想定している場合には、賃料を下げてしまうと、先述したように売却価格にも影響を及ぼし、売却金額が低下してしまうおそれもあるので、そこは、将来的にどうするのかを念頭に入れて慎重な判断が求められる。

5.最後に

不動産投資を不労所得とは考えずに、期中のオペレーションにおいても積極的に経営の視点を持った投資活動が求められる。
 
短・中・長期の視点に立って、修繕費として当年度の費用に入れることができれば、どれほどの節税効果があるのか、そうすることで決算書の見栄えがどうなるのか、また、資本的支出に該当したとしても、それが利回り与える影響は?はたまた売却金額に与える影響はどうなのか?を念頭に置いて期中の投資活動を営むべきと思われる。
 
 
 


税理士 山本祐紀(やまもと ゆうき)
 東京税理士会所属 山本祐紀税理士事務所 所長
 
日本通運株式会社を経て税理士資格を取得。アーサーアンダーセン税務事務所(現KPMG税理士法人)にて、企業組織再編成、タックスデューデリジェンスをはじめとした各種税務コンサルティングに従事。その後、住友生命保険相互会社において、新規事業のコンサルティング部隊立ち上げのサポートを行い、2007年に山本祐紀税理士事務所開設し、現在に至る。
現在は、不動産ファンドのSPCに係る税務会計業務を得意とするほか、東証一部企業から中小企業、芸能人・スポーツ選手まで幅広い層の顧問先と共に奮闘中。
 
・電子書籍「ちょっと行列のできる税務相談所」リリース
・「今すぐ取りかかりたい 最高の終活」共著

 


 
 

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