【吉崎誠二の不動産市況コラム】2024年の地価公示分析
専門家コラム

【吉崎誠二の不動産市況コラム】2024年の地価公示分析

2024年(令和6年)分の地価公示が3月26日に国土交通省より発表されました。

全国の全用途(全用途は、住宅地・商業地・宅地見込地・工業地)平均で2.3%の上昇。前年は+1.6%、一昨年は+0.6%、でしたので、コロナ禍以降3年連続して全国平均では上昇、そして連続して上昇幅拡大となりました。都市部の上昇幅が拡大したことに加えて、地方においても前年からの変動率がプラスになった県が増えたことが要因でしょう。

バブル期・ミニバブル期との比較

1990年以降でみれば、1991年には全国全用途平均が前年比+11.3%となり最も大きく伸びた年になっていますが、2024年はそれに次ぐ2.3%の上昇率でした。ミニバブル期の最終局面の2008年は前年比+1.7%でしたので、現在はミニバブル期を超える状況となっていることがわかります。こうしてみれば、1980年代後半から1991年までの地価上昇が凄く、また全国に渡るものであり、後年「バブル」と呼ばれたことが理解できます。また、ミニバブル期(2005年~08年)は東京など大都市部の地価は上がりましたが、地方への波及はあまり見られず、全国平均の地価が伸びなかったものと思われます。近年の地価上昇は、都市部はもとより地方にも波及しており、さらに「ジワジワ、ゆっくり」、「長期に渡り」(コロナ禍は除く)、という特徴で、「バブル」とは言えない状況でしょう。

2024年地価公示の状況

全国平均を用途別にみれば、住宅地は+2.0%(前年は+1.4%、前々年は+0.5%)、商業地は+3.1%(前年は+1.8%、前々年は+0.4%)といずれも3年連続の上昇、そして上昇幅も連続して大きくなりました。

住宅地地価は地域別に見れば、全国・三大都市圏・地方圏(四地方都市以外)で上昇幅が大きくなりました。都市部では、引き続き住宅価格とくにマンション価格の上昇が続いています。四地方都市(札幌・仙台・広島・福岡)では昨年より上昇幅は縮まりましたが、依然+7.0%と高い伸びとなっており、四地方都市の周辺地域も引き続き上昇を続けています。また、地方でも人気のリゾート地や別荘地、そして新線の鉄道開業に伴い利便性が向上した地域などで、地価上昇が顕著となっています。

商業地では、新型コロナウイルスの第5類への移行(2023年5月)で国内外の観光需要・ビジネス需要が大きく伸び、都市部や主要観光地では地価の大幅な回復が見られ、ほぼコロナ禍前の伸び率までになっています。また、都市部ではオフィス回帰が進み、オフィス需要が伸び、店舗需要が回復していることや、三大都市圏や地方大都市での再開発事業が多くなり、その結果、利便性・繁華性が向上することへの期待感から地価上昇が継続しています。

東京圏の状況

ここからは、首都圏(地価公示では東京圏と表示)の状況を見て参りましょう。

東京圏は、東京都区部、多摩地区、神奈川県の一部(横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市など)、千葉県の一部(千葉市、市川市、船橋市、浦安市など)、埼玉県の一部(さいたま市、川越市、川口市、越谷市など)、茨城県の一部(取手市、守谷市など)の地点です。

東京圏では、全用途平均で+4.0%(前年は+2.4%、前々年は+0.8%)、住宅地は+3.4%(前年は+2.1%、前々年は+0.6%)、商業地は+5.6%(前年は+3.0%、前々年は+0.7%)となりました。いずれも3年連続で上昇幅が拡大しました。一都三県は住宅地・商業地とも全て上昇、また上昇幅も連続して大きくなり、好調が続いています。

東京圏 住宅地の状況

東京都区部の勢いは強く、23区平均の住宅地上昇率は+5.4%(前年は+3.4%)で、一昨年・昨年に引き続き23区全てにおいて上昇し、また上昇幅も全ての区で拡大しました。上昇率が最も高かったのは豊島区で+7.8%(前年は+4.7%)、続いて中央区+7.5%(前年は+4.0%)、文京区+7.4%(前年は+4.4%)となっています。逆に、上昇率が最も小さかったのは世田谷区+4.0%(前年は+2.3%)、練馬区+4.0%(前年は+2.8%)続いて、葛飾区+4.2%(前年は2.8%)となっており、比較すれば戸建住宅の多い地域の伸びが低くなっています。

また、都心での住宅価格高騰を受けて、周辺地域の住宅地の地価上昇が顕著となっています。子育てしやすい市として名高い流山市、川を渡ればすぐ東京都である市川市では、住宅地の地価は+10%を超える上昇となり、現在の住宅事情が色濃く出た格好となりました。

東京圏 商業地の状況

商業地では、23区平均では+7.0%(前年は+3.6%)で、2年連続で全23区の変動率がプラスとなりました。再開発が増えており、新たな商業施設が誕生、さらにマンションとの一体開発も増えています。商業地におけるマンション用地としての入札案件も多いようで、こうしたことが商業地の地価上昇の要因の1つでしょう。商業地で上昇率が最も高かったのは台東区+9.1%(前年は+4.1%)、次いで荒川区+8.3%(前年は+5.2%)、中野区+8.2%(前年は+5.2%)となっています。台東区は国内外の観光客に人気の浅草があり、荒川区は成田国際空港へのアクセスの良さが再認識されたことが要因と思われます。

まとめと2025年への展望

3月の日銀金融政策決定会合でマイナス金利解除を含め金融政策に変更がありましたが、内容の実態は、「異次元の金融緩和」から「通常時の金融緩和」への変更ということで、決定後の貸出金利は今のところ(執筆時:3月29日)ほとんど上昇していません。引き続き金融緩和が続き(=低金利が続き)、「不動産市場は活況が続く見通し」と言えそうです。

このようなことから、2025年3月に公表される公示地価は、引き続き上昇の可能性が高いと思われます。ただし、年内にもう1回あるいは2回の金利の上昇があれば、多少金利が上がる可能性が高くなりますので、日銀の金融政策の動向には注視しておきたいものです。

このようなことから、2025年3月に公表される公示地価は、引き続き上昇の可能性が高いと思われます。日銀発表の「景気の緩やかな回復」「賃金と物価の好循環が続く」状態が続くこととなれば、今回のマイナス金利政策解除に引き続いて金利のプラス側への引き上げも予想され、銀行金利も多少上がる可能性が高まります。

日銀の金融政策の動向には注視しておきたいものです。

 

メルマガ登録
セミナー申込