2022年01月31日(最終更新:2023年06月14日)
区分マンション投資を行っていた方が、それら複数戸を売却して1棟モノの賃貸住宅に乗り換える例がこのところ多く見られます。
今回は、区分マンション投資から1棟モノ賃貸住宅投資へ切り替える際に、注意しておきたい点について考えます。
最初に、不動産投資にはどれくらいのお金がかかるのかを検討してみます。
まずは、物件の費用です。首都圏での投資用区分マンションは主にワンルームマンションですが、概ね新築では2500~4000万円、中古物件では1500万円~3000万円といった価格帯ですが、1棟モノ賃貸住宅では低層の木造でも1億円前後から、RC造では3億円以上はします。
言うまでもありませんが、賃貸用物件(それ以外の不動産も同じです)では、土地には消費税がかからず、建物にだけ消費税がかかります。「土地は消費されない」という理由だとされています。そのため、消費税額も大きくなり、その扱いを検討する必要が出てきます。
また、区分マンション投資ではあまり気にする金額ではない諸経費や中古物件を購入した際の修繕費用などもある程度の金額になります。
諸経費ですが、後述するような費用項目は同じような内容ですが、金額が大きく変わりますので、しっかりと予算組みしておく必要があります。概ね8%前後、10%くらいみておくといいでしょう。
諸経費の主なものは、仲介手数料(売主から直接の場合はかかりません)、印紙税、不動産取得税、登録免許税(登記の際に必要)、火災保険などです。加えて、中古物件の場合は、修繕費用もかかります。
修繕費用は物件の状況により異なりますが、区分マンションの中古物件では、それほど大きなお金はかかりませんが、築後一定年数以上の1棟モノ中古賃貸住宅に投資を行う場合は必ずみておきましょう。
物件費用だけを見込んでいると、金融機関からの融資の割合にもよりますが、「自己資金が足りず、購入できない!」ということにもなりかねますので、注意が必要です。
この金融機関の融資割合ですが、ワンルームマンション投資では、100%近く借りる(フルローンに近い)事例も散見されますが、1棟モノ賃貸物件では融資割合(LTV)は、投資家の属性や金融機関のスタンス、時期により異なります。
そのため、総額いくらかかるのか?と、金融機関からいくら借りられるのか?そして自己資金はいくらまでだせるのか?の3つをセットにして物件選びを行う必要があります。
投資用、自用とも不動産を所有していると管理費がかかります。ここは、区分マンションと1棟モノ賃貸物件では額も内容も大きく異なります。
管理費用の項目で大きな違いは、建物管理費がかかるという点です。区分マンションでは、管理費と修繕積立金がかかりますが、1棟モノ賃貸物件では建物管理費(BM費)がかかり、いうまでもありませんが、1棟全て分かかります(区分マンションでは、これを割っています)。エレベーターの保守点検、消防設備点検などです。
また共用部にかかる管理費用も負担しなければいけません。共用部の光熱費、水道費などです。規模にもよりますが、月当たり5万円程度はかかるものと見込んでおくといいでしょう。
また、物件管理(PM費)も一括でかかります。管理会社との契約にもよりますが、清掃維持管理など一般的なもののみでは家賃総額の約5%程度、滞納保証をつけると7%程度、空室保証(サブリース契約)では10%+α程度の手数料がかかります。
最後に、「管理」とはやや異なりますが、毎年かかる固定資産税や都市計画税の金額も区分マンションよりもだいぶ大きな金額となります。
区分マンションに比べて収入が大きくなる1棟モノ賃貸物件投資ですが、その分支出も色々と発生します。これらをしっかり把握して、収益シュミレーションを正確に組み立てましょう。
不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。