専門家コラム

不動産投資は東京一極集中?伸びる貸家新設住宅着工戸数にしめる東京の割合

移動年計とは

季節により変動がある統計数字では、単月で数字を見ても傾向がつかめないようなデータがあります。住宅着工戸数の推移もこうした例と言えます。そのため、年合計(1月~12月)や年度合計(4月~3月)で傾向を分析するのが一般的です。しかし、1~12月や4~3月では1年間に1度しか集計できないため、1か月ずつずらして年間合計を算出することで、月単位での変化が見やすくなります(毎月ごとの年間合計)。こうして求められたものを「移動年計」と言います。

 

また、前年の同じ月と比較する「前年同月比」で見ることもあります。しかし、2020年3月以降は新型コロナウイルスの影響が大きかったため、前年同月比の数字で、極端に大きく上下することがあります。例えば、昨年の3月や4月は初めての緊急事態宣言が発令され、様々な活動がストップしました。そのため、今年3月や4月は、例年に比べてそれほど増えていなくても、前年同月比でみると、「大幅増」となってしまいます。

 

こうしたことをふまえてみると、昨今の新設住宅着工戸数などは移動年計でみるのが最も傾向がつかめるといえるでしょう。

 

回復のキザシが見え始めた貸家新設住宅着工戸数

賃貸住宅の着工戸数(全国合計)は、2018年半ばから前年同月比でマイナスが続いていました。しかし、21年3月に31カ月ぶりのプラスとなりました。落ち込みが続いていたものが横ばいから回復基調になっていることが、下図移動年計から分かります。

図1)貸家移動年計(全国)

 

図1は、20年4月以降の貸家新設住宅着工戸数(全国合計)の移動年計です。(20年4月の数字は、19年5月~20年4月の合計値、以下同じ計算方式)

 

このグラフをみると、ずっと落ち込んでいたものが、21年年始から横ばいとなり、ここにきて僅かに上昇していることがわかります。これが、一時的な回復なのかは、もう少し見る必要があります。

 

東京は、全国でも異質なグラフ

図2)貸家移動年計(東京)

 
図2は、図1と同じ算出方法で、東京都の数字だけを抽出したものです。全国合計と比べて大きく異なることがわかります。ここでは、東京都だけのグラフを掲載していますが、他の地域では、全国のグラフの傾向と似ています。

 

20年4月~8月までの移動年計は新型コロナウイルスの影響が大きく出た時でしたが、上昇が続きました。その後、20年年末にかけて落ち込みますが、21年に入ると急上昇しています。

 

全国的に見ても、東京における賃貸住宅投資の勢いは止まらず、つまり賃貸住宅需要があり、それを求めて投資需要があります。それに呼応するように、賃貸住宅着工が進んでいるということでしょう。

 

それでは、貸家着工戸数に占める東京の割合がどう変化しているのか、移動年計で見てみましょう。

 

図3)貸家着工戸数の東京が占める割合

 

図3は、東京に占める割合、つまり図2の数字÷図1の数字を示しています。

 

これをみると、東京の割合は、19%から22%近くにまで、右肩上がりで上昇しています。現在の日本では10戸に2戸以上の割合で、東京都内で新築賃貸住宅が造られている計算になります。

 

こうしたことからも、賃貸住宅投資需要の東京一極集中が進んでいることがわかります。

 
 


不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

公式サイト: http://yoshizakiseiji.com/

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長 を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。

著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。


 

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