2020年01月13日(最終更新:2023年06月12日)
2019年の賃貸住宅市況を振り返りながら、2020年の展望を予測してみましょう。
(執筆時点(12月21日)で、2019年の住宅着工戸数データは、10月分まで公表されています。)
そして、後半では伸びている事業会社による賃貸住宅購入について考察してみます。
2012年から賃貸住宅(貸家)の着工戸数は右肩上がりで伸びてきました。しかし、2018年は、7年ぶりに前年比でマイナスとなりました。
2013年は消費税増税(5%→8%)の駆け込み需要で大きく伸ばします。翌2014年はその反動減で、総数、持ち家(注文住宅)、分譲住宅(戸建、マンション)は大きくマイナスとなりましたが、貸家(賃貸住宅)は、相続税改正に備えた需要の伸びがあり、反動減を吸収する形でプラスとなりました。
その後も賃貸住宅(貸家)の着工件数は伸び続けていました。その勢いに歯止めがかかり始めたのは2017年の後半でした。そして2018年は7年ぶりのマイナスとなります。
2018年は、年間約39万6000戸の貸家が建設されますが、月別で見ると前年比プラスだったのは8月だけで、他の月は全てマイナスになりました。1月と3月は二桁のマイナス、春から夏は少し盛り返してマイナス幅が減少しますが、その後、秋から年末はまた大きなマイナスとなります。
上図は2018年1月~2019年10月までの貸家着工戸数の推移と前年同月比を示したものです。
2019年の4月以降はさらに落ち込み、マイナス15%を超える月も珍しくなります。東京都市部をはじめ大都市部では比較的数字は落ち着いていますが、地方・郊外の落ち込みが大きく起因しています。
それでは、2019年年間の貸家着工戸数を予測してみましょう。
2019年の11月12月が1~10月と同程度の前年比だとすると、年間の着工戸数は約34万3千戸となり、前年比マイナス13%、戸数にして約5万3000戸の減少となります。
着工戸数の減少は、大きく2つの要因があると思います。
1つ目は、土地活用として賃貸住宅経営を始めようと思っていた方が、2013年以降の好景気の波の中で経営に踏み切り、その需要が一巡したこと。
2つ目は、不動産投資として土地を購入して、賃貸住宅を建てるタイプの着工戸数が減少していること。これは、需要はいまだ旺盛だと思いますが、金融機関の融資姿勢がネガティブなため、増えていないと思われます。
一方、2018年、2019年には事業会社による賃貸住宅取得です。1棟モノの賃貸住宅を購入する、あるいは、自ら所有する遊休地に賃貸住宅を建てる、等です。
これは、都市部だけでなく地方都市でも見られる傾向です。こうした状況からか、以前は企業向けの不動産活用セミナー(CREセミナー的な内容)で講師として呼ばれる場合、都市部開催のセミナーが多かったわけですが、2019年は地方都市開催のセミナーで呼ばれることも増えました。
セミナーに来場される(講演を聞いていただいた)、企業経営者・企業幹部の方とお話していると、「景気のいい今のうちに、賃貸住宅を取得して、たとえ景気が落ち込んでも、賃料収入での下支えを目論んでいるんです。」という声を聞きます。
企業が取得する賃貸住宅は、たいていRC造によるマンションタイプで、また戸数が多いものです。
「企業業績がある程度維持できているうちに、景気悪化時の下支えとして活用したい」という目論見のようです。
現在の不動産市況から判断すると、地価などの公的な指標は上昇した数字が出る見込みです。しかし、市況感としては、2020年の不動産市況は「横ばい」だと想定されます。こうしたことを鑑みると、2020年の賃貸住宅着工戸数は、概ね2019年の後半並みの数字だと思われます。
引き続き、あるいは今年以上に、事業会社による賃貸住宅の取得が増えてくるものと思います。この傾向は都市部だけでなく地方都市でも広がると思います。
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