2022年02月28日(最終更新:2023年06月14日)
昨今、報道などで、東京への人口一極集中が是正されつつあると言われています。
引用:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」
総務省統計局の2021年人口移動報告によると、東京都の日本人転入超過数は1万815人で、コロナ前の2019年(8万6575人)から、87%もの大幅なマイナスとなりました(転入がプラスであることには変わりありません)。
コロナ直後の昨年2020年の数字では転入超過数が3万8,374人でしたので、新型コロナウイルスの影響2年目で大きく状況が変化しているようです。
東京23区においては、年間の転出者が転入者を上回る転出超過となりました。東京23区が転出超過となったのは、外国人を含めた集計を開始した2014年以来初で、日本人のみの統計で遡っても1996年以来、25年振りのことです。
コロナ禍前は5万~7万人程度の転入超過で推移してきました。今回の転出超過が続くのか一時的なものかはわかりませんが、少なくとも21年に限っては大きな変化となりました。
次に転入者数を見てみましょう。
2021年の転入者数は、統計が始まった1954年以降で最も少ない38万8,297人でした。
近年は、「東京一極集中」と騒がれ、政府も「地方創生」として、東京圏への転入超過を是正することを目標に掲げていましたが、ほとんど成果は出ていませんでした。
しかし、コロナ禍の影響でテレワークが浸透するなどライフスタイルの変化が一部の方々の間に浸透し、一極集中が少し是正され始めている状況と言えそうです。
このまま、東京一極集中という概念が薄らいでいくことによって、賃貸需要は変化していくのでしょうか?
上記のグラフは、2021年における東京都からの転出者数を年齢別に見たものです。
30~44歳の「子育て世代」と想定される層が11万8,204人で多くを占めているのがわかります。また、0~14歳の「子ども世代」も3万5,244人でした。つまり、転出者の多くは、ファミリー層が占めているようです。
一方、コロナ禍でもどの年齢層が、東京都に転入してくる数が多いのでしょうか?
グラフを見ると、20代が圧倒的に多いのが分かります。更に、大学進学で上京する15歳~19歳を加えた15歳~29歳の層(以降、本稿では「若者層」と定義)で、転入者数の推移を見てみましょう。
東京都へ転入してくる若者層は、2019年からは減少しているものの、過去と比べると大きく減ってはいません。また、全体の転入者数の減少の割に、若者の転入者数の数はそこまで減っていないため、2021年では、全ての転入者数に占める若者の数は、57%と半数超となっています。
想像に難くないことですが、若いうちから持ち家に住むことはあまり考えられません。実際に、令和2年の国勢調査では、東京都において、世帯主の年齢が15~29歳の世帯の76.8%が民営借家に住んでいます。
引用:総務省統計局「令和2年国勢調査」
東京の一極集中が緩和されつつあると言われながらも、いまだ、賃貸住宅需要の核であると言える「若者」の転入はそれほど減少しておらず、東京の転入者数減少イコール賃貸需要の先細りとは言い切れないようです。
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