2019年05月30日(最終更新:2023年06月07日)
先月末に、総務省統計局より「平成30年住宅・土地統計調査」が発表されました。この調査は、日本の不動産に関するデータとしては最大規模周期調査で、昭和23年から5年ごとに行われ、今回速報が発表された「平成30年住宅・土地統計調査」はその15回目に当たります。
今回は、速報値として発表されたデータの中から、空き家について詳しくみていきたいと思います。
住宅・土地統計調査は、我が国における住宅及び住宅以外で人が居住する建物に関する実態並びにこれらに居住している世帯に関する実態を調査し、その現状と推移を全国及び地域別に明らかにすることにより、住生活関連諸施策の資料を得ることを目的としています。(総務省統計局HPより)
調査方法は、まずは、全国の世帯の中から統計的な方法によって、約15分の1の割合で無作為に抽出します。続いて、その調査地域内にある住戸(住宅及び住宅以外で人が居住している建物)の中から、統計理論に基づいて定めた方法により、調査対象となる住戸を無作為に選定します。
こうして選定された約370万の住戸と住んでいる世帯が、調査の対象となります。
空き家は、調査員が日常的に住んでいない住宅に対して、まずは訪問時間を変えて確認を行います。それでも不明の場合は、建物外観を確認したり、近隣の人や建物の管理者などに確認したりすることで特定されます。
こうして得られた調査単位区別の調査結果から、市区町村別総人口に合致するように統計上、空き家の数として算出しています。
前回の平成25年住宅・土地統計調査では、空き家数は820万戸、空き家率は13.5%といずれも過去最高値となったため、マスコミでも社会問題として大きく取り上げられたのは、皆さんもご記憶されているかもしれません。そして、今後ますます増えていくという予測もされており、平成30年の調査結果が注目されていました。
蓋を開けてみると、前回とほぼ横ばいの13.6%と上昇スピードが鈍くなっているようです。
(総務省統計局「住宅・土地統計調査」より作成)
不動産投資家にとって、知りたいのは賃貸住宅の空室率であり、(※賃貸住宅においてイメージに合致する“空室率”というワードを本コラムでは使用します。)先ほどお伝えした13.6%というのは、あくまでも空き家全体です。住宅・土地統計調査では、空き家は厳密には以下のように定義されています。
―別 荘・・・・・週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅
―その他・・・・・ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅
新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば,転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の区分の判断が困難な住宅を含む。)
つまり、該当エリアの「賃貸用住宅の空室」の数と「賃貸住宅の総数」が分かれば、「賃貸住宅の空室率」が算出されます。賃貸住宅の総数は、まず【住宅の所有の関係】が掲載されているデータより「借家」の数をとってきます。これは、実際に人が住んでいる借家の数になるので、これに「空き家(賃貸用の住宅)」を加えた数が総数となります。
例えば、東京都の場合(「平成25年住宅・土地統計調査」より)
・賃貸用住宅(人が住んでいる):3,100,300
・賃貸用住宅(空き家):598,400
計:3,698,700
ですので、賃貸住宅の空室率は 598,400÷(598,400+3,100,300)×100=16.2%
となります。
なお、4月末に発表された速報は6データにとどまっており(2019年5月上旬現在)、【住宅の所有の関係】に関するデータは発表されていません。今後順次発表されていく予定です。
また、現在は都道府県単位だけですが、今後は市町村データといったよりピンポイントな情報もここから得ることが出来るようになります。
空き家率のデータとして、今回は総務省の「住宅・土地統計調査」をあげましたが、他にも空室に関するデータは色々あります。投資を考えているエリアの空室率というのは、非常に重要です。様々なデータを総合的に見て投資判断をするようにしましょう。
収益不動産ONLINE編集部
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