【吉崎誠二の不動産市況コラム】データで見る!海外の都市と比べた東京の不動産投資の魅力
不動産コラム

【吉崎誠二の不動産市況コラム】データで見る!海外の都市と比べた東京の不動産投資の魅力

2025年5月30日に第24回「国際不動産価格指数」(2025年4月現在)が日本不動産研究所より公表されました。国際不動産価格指数は各年4月1日と10月1日を価格時点として、5月末と10月末の年2回公表されます。
ここでは、海外の都市と比べた東京の不動産投資の魅力について解説します。

国際不動産価格指数は、国際的な主要16都市の不動産市場の動向を調査するため、対象都市ごとに計6件(オフィス3件・マンション3件)を抽出し、新築・新規契約を前提とした1m²あたりの価格や賃料を評価して指数化したものです。対象都市は、東京・大阪・ソウル・北京・上海・香港・台北・シンガポール・クアラルンプール・バンコク・ジャカルタ・ホーチミン・シドニー・ニューヨーク・ロンドンの15都市に、今回の調査からムンバイ(インド)が新たに追加され、16都市となりました。本調査では、オフィス市場とマンション市場の不動産価格・賃料が指数化されていますが、今回はマンション市場に着目していきます。

■マンション価格指数・対前回変動率の比較

(日本不動産研究所 第24回 国際不動産価格賃料指数より作成)

■マンション賃料指数・対前回変動率の比較

(日本不動産研究所 第24回 国際不動産価格賃料指数より作成)

東京のマンション価格指数の対前回変動率は1.4%の上昇となりました。東京は対象都市の中で4番目の上昇率となります。変動率が最も高かったのは、ニューヨーク(+3.0%)、次いでムンバイ(+2.5%)、大阪(+1.5%)でした。
ニューヨークがトップの伸び率を示したのは、供給が少ない中で高所得者による高価格物件の取引が活性化したことがつながっていると考えられます。また、4月2日にトランプ政権の関税政策によって住宅建築に使われる材料が高騰したことが価格上昇の一因とも言えるでしょう。ただし、この関税政策はこの先不透明な要素が多々あり、今後さらに影響があると思われますので、動きを引き続き注目しておく必要がありそうです。

一方、東京のマンション賃料指数の対前回変動率は1.2%の上昇でした。変動率が最も高かったのは、シドニー(+3.7%)、次いでムンバイ(+3.4%)でした。東京は5番目の伸び率で、ロンドンと並んでいます。

■各都市のマンション価格指数・賃料指数の直近10年推移

(日本不動産研究所 国際不動産価格賃料指数より作成)

直近10年間の推移をみても、東京や大阪は価格指数・賃料指数ともに堅調な伸びをしていることが分かります。この要因として複数考えられますが、まずは円安の影響で海外投資家から人気であることが挙げられます。また、日本は他国と比べ、富裕層だけでなく幅広い層による物件購入が下支えしていることが特徴として挙げられるので、両市場で需要が安定していることが堅調に伸びている要因の1つだと言うことができます。加えて、建築コストは年々増えているため新築価格が押し上げられ、指数が伸びていると見ることができます。

■アジア諸国のマンション価格指数・賃料指数(東京を100とする)

(日本不動産研究所 第24回 国際不動産価格賃料指数より作成)

続いて、東京とアジア諸国のマンション価格指数とマンション賃料指数を比較してみましょう。このグラフは、東京/港区元麻布所在/高級住宅(ハイエンドクラス)のマンション価格(1戸あたり専有面積の分譲単価)とマンション賃料(1戸あたり専有面積の賃料単価)を100.0とした場合の各都市との比較指数となっています。なお、この比較指数は、価格時点において現地通貨等で評価したものをその価格時点で円換算のうえ指数化しています。

まずソウルを見てみると、価格水準は83.2・賃料水準は53.5ですので、物件価格に対する賃料は東京と比較して低いことが分かります。そのため、投資対象という観点でみると東京は利回りや価格の観点から検討に値する地域であると言えます。
では、他の国はどうでしょうか。
価格水準を見ると、北京は128.5、上海は162.0、台北は158.7と東京よりも高いですが、賃料水準を見るといずれの国も東京を下回っています。

このように、国際不動産価格指数から、東京は他のアジア諸国と比較すると物件価格に対する賃料水準が高いことが分かり、かつ直近5年の推移を見ても安定した上昇を続けているので、東京は中長期的に資産価値の維持・成長が見込まれる地域であると見ることができるでしょう。

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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