2022年06月30日(最終更新:2023年06月15日)
家賃は、硬直性が高いと言われています。これはつまり、家賃は価格の上下が少ないということです。借主による家賃の減額交渉をするケースもそもそも少なく、また、その結果、減額が実現するケースも少ないのが現状です。一方で、賃貸住宅に住んでいる方がオーナー側から家賃の値上げを打診されることもあまりないようです。
ここまで述べたように、家賃は「硬直性が高い」という前提がありますので、下のような分譲マンションの賃料推移のグラフは「募集賃料の平均」である点に注意して見る必要があります。
例えば、その月に新しい物件が出来、募集を開始した際、または、入居の入れ替わりで新たに募集をするタイミングで、その時の状況に合わせて価格を設定することになります。また、比較的高く家賃が設定される新築物件の割合が多ければ、その分平均賃料も上がりますので、その点にも合わせて注意が必要です。
それでは、グラフを見てみましょう。
※ファミリータイプのみ(専有面積30㎡未満の住戸、事務所・店舗用は集計から除外)
引用:株式会社 東京カンテイ「分譲マンション賃料」
2013年頃から首都圏の中古マンション価格が上昇を始めたのと同時期に、分譲マンション賃料も上昇をし始めました。前年比1%~5%の上昇が続きましたが、2017年に入ると上昇が鈍化しました。
しかし、その後2018年以降、賃料が堅調に推移する中、新築・築浅物件の数が増えることで募集賃料の底上げがされ、大きく上昇していきました。その後も前年同月比6%超で賃料は上昇を続けていきます。また、コロナ禍でも大きく下落することなく、推移をしました。
2021年からは上昇が鈍化し、前年比で若干のマイナスとなっていますが、依然として3900円/㎡前後の高水準をキープしている状況です。また、直近では実数値ではマイナス推移ですが(青色折れ線グラフ)、前年比(灰色棒グラフ)ではプラスとなっています。
次に、広さ別に家賃推移を見てみましょう。
※家賃=賃料+管理費・共益費等
引用:アットホーム株式会社『全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向』
図表1と出典元が異なりますが、こちらも募集時の平均値となります。東京23区では70㎡以上のファミリータイプとなると家賃が30万円超と高水準になります。次に、2020年を100とした場合で、変化を見てみましょう。
※2020年=100としたとき
70㎡以上のマンションの募集賃料の上昇が際立っています。東京23区におけるファミリータイプマンション募集賃料の上昇の背景には、テレワークの浸透とマンション価格の高騰が考えられます。まず、コロナ禍で在宅勤務が増えたことにより、より快適な執務環境を求め広いマンションへの需要が高まりました。
引用:公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」
上記の図表は、東京都の中古マンションの成約価格を㎡数単価で表したものです。
東京を中心に、首都圏は依然としてマンション価格の高騰が続き、新築マンションの価格高騰に連動するかたちで、賃貸マンションの家賃が上昇している状況です。
賃貸マンションの賃料推移、販売価格の推移に今後も目が離せません。
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