2020年05月20日(最終更新:2023年06月13日)
政府は4日、新型コロナウイルス特措法に基づく全都道府県への緊急事態宣言を31日まで延長することを正式に決定しました。
東京都の感染者数は100人を下回る日も増えてきていますが、専門家によるとまだまだ予断を許さないという状況のようです。一方で経済も相当なダメージを受けています。
今回はコロナウイルスが不動産市況に与える影響についてみていきたいと思います。
新型コロナウイルスに関する初期の報道は、2020年年始の頃でした。それから、1月下旬くらいまでは「中国武漢で原因不明の肺炎が流行している」というもので、この頃の日本では、「対岸の火事」という状況でした。
しかし、2月初旬ごろにダイヤモンド・プリンセス号での集団感染が報じられると国内で大きな騒動となり、マスクや消毒液の不足事態が発生、在宅勤務の推奨と続きます。
2月下旬には北海道で緊急事態宣言が発令、そして政府は学校などの休校要請を出し、拡大防止策を進めます。
一方、3月の上旬からは、中国・韓国・台湾等での感染者拡大には歯止めがかかり、感染者はアメリカやヨーロッパ(とくに、イタリア・スペインなど)で拡大を続けました。
一方、日本での感染数が急増したのは、3月の終わりごろからです。それからの流れは、冒頭の節のようになります。
日経平均株価の推移を見ると、今述べたコロナウイルス騒動の流れを株価は反映しています。クルーズ船の報道が続いていた頃の、日経平均株価は2万3000円台で推移していました。
北海道での緊急事態宣言・政府による学校休校要請あたりの2月26日~29日あたりに、少し株価が下がります。しかし、3月6日までは大きな下落という感じではなく2万円台はキープしていました。
大きく下げ始めたのは、アメリカやヨーロッパでの感染拡大が顕著になった3月10日以降で、ニューヨーク市場の株価下落の影響だけでなく、「日本企業も2020年1~3月の業績は大幅悪化の様相で、回復には時間がかかりそうだ」、という思惑から株価は大きく下げました。
しかし、その後4月に入ると日経平均株価は回復しはじめ、このところは19000円台半ばをキープしています。
株価と異なり、不動産市況(とくに実物不動産の市況)はタイムリーなデータがなく、たいていのデータが数か月後に公表となりますので、実態をデータで把握するにはもう少し時間を要します。(5月下旬には3月分が出始めます)
しかし、JREIT価格については、株価と同じくタイムリーで分かりますので、ここからはJREITデータを見ながら、不動産市況を分析してみます。
JREITが大きく値を下げたのは3月19日前後で、3月初旬まではかなりの高水準でしたので、そこから一気に半減しました。現在はそこから少しもどしており、全体では概ね3割減といったところです。
少し細かく分野別にみると、ホテル系REITは(下落ピーク)約70%減→(直近の水準)60%減、商業系が約60%減→55%減、オフィス系45%減→30%減、となっています。これらが戻すのには相当な時間がかかると思います。
逆に落ち込みが少ないのは、レジ系45%減→15%減、物流系20%減→5%減と巣ごもり消費による通販の進展が物流業の後押しになっていますので、これに好感を示していることがわかります。また、不動産の中でも最も安定感のある住宅系投資ですが、この時勢でもレジ系は、多少落ち込みがあるものの安定感を見せています。
不動産証券化商品であるJREITですが、その値動きを実物不動産取引には、極めて高い連動性があることが知られています。これは、日本(JREIT)に限らず、世界の他のREITでもいえることです。
しかし、実物不動産取引の売買の場合、上昇下降が激しい時期には価格の折り合いがつきにくいため、REITの値動きがすぐには反映されず、概ね1年前後遅れて実物不動産取引価格に反映されています。
この先、特に緊急事態宣言が解除されて以降のJREIT価格がどうなるかは、今のところ読めませんが、JREITの動きを見ていると、大まかな1年後の価格予測がつきますので、注目です。
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