不動産投資家が注目すべき指標、 貸家着工戸数が回復傾向
不動産コラム

不動産投資家が注目すべき指標、 貸家着工戸数が回復傾向

不動産投資の指標ともなる、貸家着工件数

今回は貸家着工戸数について考えてみたいと思います。貸家着工戸数は、住宅着工統計の中で「利用関係別」の項目として公表されており、国土交通省より毎月公表されています。

国土交通省から発表される建築着工統計と似ていますが、実は、住宅着工統計調査は建築着工統計調査から住宅のみを取り出してまとめているものなので、建築着工統計調査の一部と言えます。

この住宅着工統計は、建築主から都道府県知事に提出された建築工事の届出を毎月集計して作成されています。

貸家着工戸数は、新たに供給される賃貸住宅の数を示します。つまり、既に投資用不動産をお持ちの方は、ライバルとなる新規貸家の数がどれくらいか、知っておくべき指標と言えます。

それでは、貸家着工戸数について見ていきましょう。

貸家着工戸数(全国)

貸家着工戸数(全国)

上のグラフは全国の貸家着工戸数の推移です。2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられましたが、その直前は駆け込み需要で前年同月比二桁を越える水準で推移していました。

そして、消費税が8%に上がった直後はその反動で前年同期比マイナスが続きましたが、その後、低金利と不動産投資ブームにより再びプラスに転換し、好調が暫く続きました。

月によって大きく変動のある貸家着工戸数ですが、トレンドをより分かりやすくするために、2020年1月から過去12カ月の合計値の推移で見ていきましょう。

貸家着工戸数(移動年計)の推移

貸家着工戸数(移動年計)の推移

これを見ると、2021年初旬を底となり回復傾向にあり、現在はコロナ前の水準にまで回復している様子がうかがえます。興味深いことにこのグラフのカタチはあるグラフと非常に似ています。

個人による貸家業への設備資金新規貸出

個人による貸家業への設備資金新規貸出

出典:日本銀行

これは、日本銀行が国内銀行の貸し出し状況をまとめたデータで、貸出先が「個人による貸家業」であるものを抽出した結果です。

これを見ると、新規貸出額は明らかに2016年をピークに減少しているのが分かります。2017年以降減少しているのは、この頃にいわゆる”スルガ問題”が起こり、それまで金融機関で続いていた積極的な融資姿勢が、一部で厳格化してきたことが一因に挙げられます。

先ほどお伝えした通り、貸家の着工戸数は建築主から都道府県知事に提出された建築工事の届出がされたタイミングでカウントされており、また、図表2のグラフは年間の移動合計でグラフを作成しているため、若干のズレは生じていますが、上記二つのグラフは山も谷も同じように見えます。

現在、個人の貸家業に対する新規の貸出が若干上昇しているということもあり、今後の貸家着工戸数も注目されます。

ここで、今後の貸家着工戸数を占うのに、重要な観点があります。それは金利の動向です。

各種金利の推移

各種金利の推移

図をみれば2022年になってから、金利は上昇しています。しかし、これまでの金利がかなりの低水準でしたので、長期推移でみても、まだ低い水準と言えます。

とはいえ、欧米では金利の上昇が進みつつありますので、いつ日本も金利が急上昇するかどうか分かりません。

わずかな金利の上昇でも、総支払額に影響を与えるので、不動産投資を行っているものとしては、金利の動向に引き続き注意する必要があります。

そして、金利が大きく上昇すると、不動産投資を行おうとする人も今よりは減少するかもしれません。そうなると、また貸家着工戸数にも大きく影響が出てくると見られます。

不動産投資は東京一極集中!? 貸家新設住宅着工戸数に占める東京の割合
不動産投資は東京一極集中!? 貸家新設住宅着工戸数に占める東京の割合
目次1 移動年計でみる新設住宅着工戸数2 回復のキザシが見え始めた貸家新設住宅着工戸数3 東京は、全国でも異質なグラフ 移動年計でみる新設住宅着工戸数 季節により変動がある統計数字では、単月で数字を見...

収益不動産ONLINE編集部

収益不動産分野のシンクタンク「収益不動産総研」が運営しています。不動産投資に役立つあらゆる情報をお届けします。収益不動産をこれから購入する方、すでにお持ちの方が成功に近づくためのノウハウを提供しています。

メルマガ登録
セミナー申込