【不動産市況 第35回】地価の上昇は、都心エリアから利便性の高い住宅地エリアへ

9月19日に、国土交通省より「2023年都道府県地価調査」が発表されました。東京23区住宅地の平均上昇率は4.2％で、前年の2.2%から上昇幅が大幅に拡大しました。東京23区における住宅地の区別の結果を詳細に見ていきましょう。

コロナ後は利便性の高いエリアの価格上昇が目立つ

区別 住宅地変動率比較

※2023年の結果で降順

今回、最も上昇率が高かったのは、豊島区の6.2%でした。続いて文京区6.1％、品川区、荒川区それぞれ5.5％でした。逆に上昇幅が小さかったのは世田谷区3.1 ％、葛飾区3.2％、練馬区3.3％でした。また、東京23区内で最も上昇率が高かった地点も豊島区内にあり、「豊島区北大塚１－２４－３」の6.9％でした。
このエリアは、JR大塚駅徒歩圏内、かつ、その他の路線へのアクセスもいい利便性の高い立地で、住宅需要が旺盛なエリアと言えそうです。

また、コロナ禍前後の変動率推移を比較すると、コロナショック後は、港区や目黒区、千代田区、中央区、新宿区などの都心エリアが早く回復していましたが、その後は、「利便性の高い」エリアでの上昇が際立っています。

東京23区今後の地価展望は？

区別 地価公示の標準地と同一地点である基準地の平均推移

東京都財務局「令和5年東京都基準地価格」より、一般社団法人 住宅・不動産総合研究所社団が作成

上記のグラフは、地価公示と同一地点である基準地を区別に平均を算出した結果です。ここで、地価公示と基準地価の違いについておさらいしたいと思います。
公示地価は地価公示法に基づき1月1日時点の価格を算出、基準地価は国土利用計画法に基づき7月1日時点の価格を算出という違いがありますが、どちらも土地を売るときや購入を考えているときに参考価格として利用するために作成されているという点で共通しています。
厳密には、基準地価は1地点につき不動産鑑定士1名以上（公示地価は、2名以上の不動産鑑定士が別々に調査）による鑑定評価をもとに決めるという点と、都市計画区域以外も含まれる点が異なりますが、評価方法は基本的に公示地価とほぼ同じとなっています。つまり、公示地価と基準地価で評価する場所が共通の場合、1年を通して1月と7月の2回調査がなされるというわけです。２つの地価動向を注視することで、土地の価格動向をタイムリーに把握しやすくなるというわけです。

グラフに戻りましょう。上のグラフは、青色が2022年の基準地価から2023年の地価公示までの地価変動率、赤色が2023年地価公示から今回の基準地価の変動率を比較したものです。

多くのエリアで、半年前と比べて地価変動率が大きく拡大しているのが分かります。地価回復に勢いがついてきたのが分かります。新型コロナウイルス禍からの経済再開が追い風となり、今後更に地価が回復していくエリアも増えていくとみられます。

一方で、半年前と比べて変動率が縮小したエリアもあります。例えば、江戸川区や葛飾区、新宿区は今回、地価公示ほどの上昇率とはならず、上昇幅が縮小しました。ただ、新宿区に関しては、コロナ禍からの回復スピードも比較的早く、実際、2022年の基準地の上昇率でも中央区に続く2位でした。地価上昇のスピードが失速したとは言い切れない状況でしょう。

現在は、低金利が住宅需要を後押ししている状況です。このような状況が続く限り、前述の通り、交通利便性が高く住宅需要が旺盛なエリアでの地価上昇は暫く続くと考えられそうです。

参考：東京都財務局「令和5年東京都基準地価格」

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