【投資の極意 第67回】首都圏賃貸住宅賃料は上昇傾向が鮮明に
不動産コラム

【投資の極意 第67回】首都圏賃貸住宅賃料は上昇傾向が鮮明に

2013年以降、実需用マンション、投資用マンションの価格が上昇している割に、都心の賃貸住宅の賃料(家賃)の上昇幅は比較的少ない状況が続きました。
そのため、賃料(正確にはNOI)÷物件価格で算出される、投資利回りは一貫して低下が続いていました。

しかし、ここ数年様相が変わってきています。主に分譲マンション賃貸などが多いファミリータイプ物件は2021年以降、主に単身世帯がターゲットのワンルーム・コンパクトタイプの物件の賃料も22年以降、賃料上昇が鮮明になってきました。
この傾向が続けば、かりに2024年中にマイナス金利政策が解除されても、賃料上昇分により、不動産価格への影響は限定的になるものと思われます。ここでは、賃料上昇の現状と今後の見通しについて解説します。

住宅賃料に関する公表データは多くない

住宅賃料の詳細な公表データは多くありません。多くの物件を管理するハウスメーカー系管理会社やアパート建築系管理会社、その他賃貸住宅を管理する会社が、自社管理物件の詳細な賃料データを公表している例はほとんどありません。

また賃貸ポータルサイトなどでは、公募家賃は掲載されていますが成約家賃は分かりません。ワンルーム・コンパクトタイプは公募家賃=成約家賃の場合が多いですが、大きいサイズの物件はそうとも限らないので、正確な数字が分かりません。

公的なデータでは、総務省が公表している民営家賃のサンプル調査の結果がありますが、5年ごとに調査対象者が変わるようで、5年間はほぼ横ばいで、対象が変わるごとに大きく変化しており、あまり使えるデータとは言いがたいものとなっています。さらに、シンクタンク等が公表しているデータも、元データが少ないため、あまり多くありません。

上場リートの賃料データ

住宅賃料の動向を知る上で、比較的参考になり得るものとして、上場している不動産ファンドであるJREITのレジデンス系銘柄のIR資料があります。

JREITは東京証券取引所に上場している銘柄ですので、該当銘柄のサイトを見れば、保有する資産の運用状況を誰でも入手して知る事ができます(決算資料、資産運用報告書など)。

このうち、保有資産(運用資産)のほぼ100%が賃貸住宅である「レジデンス系REIT銘柄」は4つあります。さらに、そのうち3銘柄は都心物件が中心であり、3銘柄保有物件の総戸数は3万戸を超えていますので、ある程度の住宅賃料の動向が分かります。ただし、これら銘柄の保有物件は、立地条件がよく、築年数も10年未満のものが多くなっていますので、築浅物件の賃料動向となることには注意が必要ですが、収益マンション売買の多くは、築浅物件ですので、参考になると思われます。

JREITのIR資料からの都心の住宅賃料動向を読み解く

以下、レジデンス系JREIT銘柄のうち、2つを取り上げて賃料動向を見てみましょう。

まず、1つ目のJREIT銘柄は、三井不動産系の日本アコモデーションファンド(3226)です。このREITには都内でよく見る高級賃貸マンション「パークアクシス」が多数組み込まれています(2023年8月現在 賃貸住宅比率95%、東京23区比率88.5%、シングル・コンパクト比率83.4%)。
2023年8月期(現時点で最新。次期は2024年2月期)決算説明資料によれば、入れ替え時賃料変動率は、2023年8月期では都心3区物件は7.1%の上昇、他23区は3.5%の上昇、となっています。前期(2023年2月期)は、都心3区では6.8%の上昇、他23区は2.6%の上昇となっています。前々期(2022年8月期)は都心3区が4.3%の上昇、他23区が1.3%の上昇ですから、この1年間で大きく伸びていることが分かります。

次に、東急不動産系のJREITであるコンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)の資産運用報告書(最新の2023年7月期。次回は2024年1月期)をみてみましょう。このREITの保有賃貸住宅は東京23区内が90,7%、部屋はほとんどがワンルームかコンパクトタイプとなっています。
報告書によれば、入れ替え時賃料変動率は、2023年7月期で4.6%の上昇でした、前期(2023年1月期)が2.5%の上昇、前々期(2022年7月期)が0.8%の上昇ですから、この1年間で大きく伸びていることが分かります。
一方、更新時賃料変動率は、2023年7月期は0.5%の上昇、前期(2023年1月期)は0.3%の上昇、前々期(2022年7月期)が0.3%の上昇でしたので、継続賃料には上昇率に大きな変化が見られませんが、確実に賃料は上がっていることになります。

2024年の賃料は上昇確実か?

冒頭でお伝えしたように、すでに賃料が大幅に高騰しているファミリータイプを追うように、ワンルームやコンパクトタイプの賃料も上昇しています。単身向け物件の入れ替え年数は概ね3年程度のようですから、物価上昇が2022年から始まってすでに丸2年が経過、そして2024年は3年目ということになります。こうした状況から考えると、ワンルーム・コンパクトタイプともに、2024年は家賃上昇がより顕著になる可能性が高いと思われます。

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