コロナ禍の不動産投資家心理は消極的? WITHコロナでの投資動向を読み解く
専門家コラム

コロナ禍の不動産投資家心理は消極的? WITHコロナでの投資動向を読み解く

現在の不動産市況を不動産投資の専門家はどう見ているのでしょうか。

(財)日本不動産研究所が昨年11月末に公開(調査時点は10月)にした資料(第43回不動産投資家調査)を基に分析してみたいと思います。

今後投資家は積極的に不動産投資を行うのか

この調査は、不動産投資の専門家(普段、業としている)、アセットマネージャーやデベロッパー、レンダー(金融機関)生損保、年金基金、投資銀行の担当者を対象にアンケートを行った物で、「不動産投資専門家の生の声」がうかがえます。

本調査の前回20年4月時点では、新型コロナウイルスが広まり、はじめての緊急事態宣言が出され、東京の中心部の人通りは昼夜を問わずめっきり減っていました。しかし、緊急事態宣言が解かれてからは、この度再度緊急事態宣言が発令されましたが、前回のような「街から人が消えた」現象は起こっていません。感染者が大きく増えましたが、WITHコロナの様相になっています。

こうした状況からか、アンケート結果では92%が「今後も新規投資を積極的に行う」と回答しています。前回4月の調査では一時的に少し落ち込みましたが、ここ10年くらいで最も高い水準に戻っています。

金融緩和が一段と進んでおり金融機関から借りやすくなっていること(デッド)、株高などを背景にして富裕層が投資に積極的になっていること(エクイティ)などから、資金調達がしやすくなっていることがうかがえます。こうした投資マネーの行き先が国内不動産になっているわけです。

一方で、「当面控える」と保守的な解答をされている方も前回ほどではありませんが、近年のほぼ数%だったのが10月時点では11%とやや増えています。

期待利回りの変化は?

次に東京における賃貸住宅1棟モノ(ワンルーム)の期待利回りの変化についてです。

2010年頃から一貫して期待利回りは低下しています。つまり、賃料が同一ならば価格上昇ということです。さすがに4%台前半となった2019年中頃からは、期待利回りの下落幅は小さくなりました。

城南エリアにおいては、新型コロナウイルスの影響が大きく出た20年4月の調査においても19年と変わらず横ばい、20年10月分でも4.2%と横ばいとなりました。一方、城東エリアにおいては、20年4月は4.5%でしたが、10月時点では4.4%と期待利回りは低下しました。

札幌・仙台・横浜・名古屋・大阪・広島ではこの間も横ばいで、福岡は0.1ポイントの低下となっており、コロナウイルスの影響はほとんど見られません。

新型コロナウイルスの影響が出る前の不動産市況はピークだったのか?

不動産市況においてはサイクルを見定めることはとても重要な事です。それでは不動産投資の専門家は現状をどうみているのでしょうか?

新型コロナウイルスの影響が出る前20年1月時点の市況感は、どうだったのでしょうか。

「ピーク手前だった」との回答が約2割、ピーク真っただ中との回答が約7割、ピークを過ぎているという回答は8%となっていました。

ポジティブな解答が多いレジ投資

また、別のアンケート項目で、プロパティ別の新型コロナウイルスの影響については、「レジデンシャル=賃貸住宅(ワンルーム・ファミリー)」においては、「ネガティブな影響があまりなかった」が66%、「ネガティブな影響が全くなかった」が23%となっており、約9割がレジにおいて投資の影響がない、と答えています。

ちなみに、物流施設への投資では96%の方が、影響がなかったと答えていますが、レジ物件は、それに次ぐポジティブな見方をしているようです。

一方で、ホテル関連施設への投資は95%程度の方が、「ネガティブな影響がかなりあった」と回答し、都心の商業施設では約70%の方が、「ネガティブな影響がかなりあった」と回答しています。

このように、現在の不動産投資家は、「投資意欲が旺盛な状況が続いていながらも、物件種別は選んで投資をしている」という状況のようです。

コロナ禍の投資家マインドを考察 | 不動産市場にネガティブな影響はあるのか
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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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