東京一極集中は再び活発化!? 23区内への転入者の傾向を都道府県ごとに考察
不動産コラム

東京一極集中は再び活発化!? 23区内への転入者の傾向を都道府県ごとに考察

東京23区は2年振りに転入超過

2022年の東京23区への人の動きはどうだったのでしょうか?

総務省が公表した「住民基本台帳人口移動報告(2022年)」によると、外国人を含む東京23区の2022年における年間の人口の動きは、転入者が38万4,643人、転出者が36万3,223人で、転入が転出を2万1,420人上回る「転入超過」となりました。

コロナ禍で、2021年に初めて1万4,828人の「転出超過」になったものの、1年で転入超過の動きに戻ったことになります。これを受けて、総務省は、「一極集中が再び活発になるのか注視したい」としています。

参考:総務省「住民基本台帳人口移動報告 2022年結果」

東京23区の転入者数・転入超過数の推移

東京23区の転入者数・転入超過数の推移

引用:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2022年結果」

上のグラフは、2000年以降の東京23区への転入者数と転入(出)超過数の推移です。

赤色の線グラフで示した転入者数を見ると、コロナショック直後の2021年は、リーマンショックの影響を大きく受けた2009年~2010年とほぼ同水準にまで落ち込みました。

数字で見れば、東京23区の転入者数と東京都の有効求人倍率には強い相関関係があり、景気が悪くなり有効求人倍率が落ち込んだリーマンショック後には、東京への求心力も減退し転入者数も大きく落ち込みました。

コロナ直後の2021年はこのリーマンショックと同水準の転入者数の落ち込みでしたが、今回は、人の移動が制限(もしくは自粛)したことが主な原因となっています。そして、2022年は2年振りに転出超過にはなりましたが、コロナ前の水準にはかなり差がある状況と言えます。

男女別エリア別でみる東京23区への転入者の特徴

東京23区への流入元 男性が占める割合

東京23区への流入元 男性が占める割合

東京23区に流入してきた人を男女別で見ると、2022 年は38万4643人のうち男性が20万956人、女性が18万3687人で男性が全体の52.9%を占めました。東京に転入する割合は男性の方が若干高い傾向にあります。

都道府県別で東京23区への転入者の男性割合をまとめたのが上の表です。これを見ると、近畿圏は特に男性の上京率が高く、次いで、中国・四国地方もエリア全体で同じような傾向があるのが分かります。一方で、東北地方の一部の県では50%を下回わる、つまり女性の方が男性よりも東京23区に行く割合が多いエリアもあります。

次に、東京23区へ転入する人は、都道府県別で見るとどの行政区に行く傾向が強いのでしょうか?

東京23区に転入してきた人の移住前の都道府県別に、「転出先の区」を見ると、基本的にどの都道府県でも、大田区や世田谷区、練馬区など、もともと人口も多いエリアが上位になりますが、それ以降の順位では地域別に特徴が見えてきます。

都道府県別 行政区ごとの転入者割合

行政区ごとの転入者割合(東北地方、北関東地方出身者)
図1:行政区ごとの転入者割合(東北地方、北関東地方出身者)
行政区ごとの転入者割合(関西地方出身者)
図2:行政区ごとの転入者割合(関西地方出身者)

上の表で、赤く塗りつぶした部分は、各行政区の中で比較した時に、割合が高い都道府県です。一見バラバラですが、よく見るとエリアごとに特徴が見えていきます。

例えば、東北地方や東関東などの東京よりも北のエリアでは、足立区や板橋区、荒川区、北区、豊島区などの城北エリアに転入する傾向が見られます(図1)。特に茨城県では、東京23区に転出した人の約1割が転入先として足立区を選択しています(図1青枠)。また、転出先として全体的に割合の少ない、千代田区、中央区、港区などの都心3区ですが、その中だけで見ると、近畿圏の割合が高いのが分かります(図2)。

転入者の傾向を見ることは、賃貸需要を知ることにもつながります。なぜなら、転入者の多くが、まずは「賃貸」を選ぶからです。その意味でも人口動態を把握することは不動産投資をするにあたって、非常に重要なポイントと言えるでしょう。

東京への転入超過が拡大? 東京一極集中の鍵を握るのは若年世代
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