2023年05月02日(最終更新:2023年05月22日)
前回のコラムでは、成約件数と新規登録件数を築年数別で考察しました。今回も同様に、築年数を切り口に、首都圏中古マンションの成約状況と新規登録状況を考察し、需要側と供給側の特性を把握していきましょう。
まず、築年数別で、新規登録物件に対する成約件数(成約件数÷新規登録数)の割合を見ていきましょう。
東日本レインズ「築年数から見た 首都圏の不動産流通市場(2022年)」(引用)
2021年は新規登録件数が減少し、逆に2022年は増加傾向にあったので、成約率を比較すると2022年は全体的に低下しています。最も成約率が高いのは築6~10年の層で、次いで築11~15年、築0∼5年となっています。築年数20年以降に下降幅が大きくなり、築26年以降で下落率がなだらかになります。つまり、成約率では「築10年以内」と「築20年超」において、大きな区切りが存在すると言えます。同じ現象は、成約㎡単価でも見られます。
新築マンション価格:株式会社不動産経済研究所「全国新築分譲マンション市場動向2022年」(引用)
赤色で示したのが2022年首都圏新築マンション平均㎡単価の95.1万円です。これを見ると、築5年以内の中古マンション平均成約価格は、新築マンションの平均価格を越えています。また、図表1で、対新規登録成約率が最も高かった築6年~10年物件は、需給関係がタイトな状況にあることから価格が上昇傾向にあり、ほぼ新築マンションと同水準であることが分かります。
近年は、地価上昇に加え更に、物価上昇もあり、新築価格の高騰を抑えるために、専有面積を縮小したり、設備のグレードを落としたりせざるを得ない事情があります。そのため、新築マンション価格と中古マンション価格の逆転現象が生じていると考えられます。
次に成約と新規登録における平均面積を見ていきましょう。
現在の成約面積は横ばい傾向にあり、若干縮小している状況です。しかし、新規登録物件の面積については、縮小傾向がより顕著に見られます。そのため、成約と新規登録物件との面積差は拡大傾向にあります。
コロナ禍により在宅時間が長くなった中、快適な生活環境を求める人々にとって、「広さ」はますます重要なポイントとなっています。
今後は、「グレード」「築年数」「面積」などの条件が優れた物件は、高額でも取引が成立することが予想されます。不動産投資家は今後の市場および物件トレンドを読み取り、収益性の高い投資先を選定する必要があるでしょう。
社団法人 住宅・不動産総合研究所
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