2024年11月12日(最終更新:2024年11月12日)
毎年1回調査が行われている「令和5年度 土地問題に関する国民の意識調査」が、2024年3月に国土交通省より公表されました。
(調査実施期間:令和5年11月22日~令和6年2月5日)
この調査は、土地の所有、住宅の所有に関する多岐にわたるアンケート調査が行われています。その中から、「住宅の所有」に関する意識調査を取り上げて解説します。
住宅を「所有するか、賃貸か」の選択は、収入が大きな要因でもあるかと思いますが、近年の傾向を見ていると、その方の(あるいはその世帯の)志向によるところが多くなっているように思えます。
土地問題に関する国民の意識調査は今年で32年目を迎えますが、「ご自身が住む為の住宅の所有・賃借についてどのようにお考えですか」という質問項目では、「持ち家」志向が低下していることが伺えます。
「土地・建物については、両方とも所有したい」と答えた方の割合は66.0%(昨年は65.5%)で、最も多い回答でした。この回答の割合が最も多いのは、調査開始以来ずっと続いています。2023年の持ち家比率が60%台前半で推移していますので、納得の数字でしょう。
しかし、2011年(平成23年)までは、この回答率は8割を超えていましたが、その後持ち家志向の低下傾向は一気に進み、はじめて7割を切ったのは2020年(令和2年)で、最新の結果の2023年は65.0%で、このままのペースでは、5~10年後には6割を切る可能性も出てきました。
また、賃貸志向の方の割合をみれば、「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」と答えた方は17.5%でした。昨年は15.1%、一昨年は10.5%と2年連続で増えています。ちなみにここ10年間は、10~17%台の間で推移しています。この項目からは、「持ち家志向の低下が一貫して続いている」こと、そして「賃貸志向の上昇」という状況が見えます。
昨年までの3回の調査(2021~2023年)で大きく増えたのが、「わからない」と回答した方の割合でした。2019年までは、一ケタだったものが、その後の2020年以降は13~16%台で推移していました。しかし今回の調査では、前年よりも少し下がり10.8%となりました。「わからない」が2020年以降、急に増えた背景には、 ①新型コロナウイルスの影響で住まい方、働き方の変化があったこと や ②住宅価格の高騰で、「今後の住まいのあり方」について様子を伺っていること などが、主な要因と思われます。
そして2023年の後半には、すっかりコロナ禍前の生活に戻っていますので、「分からない」と回答した割合が低下したものと思われます。
「わからない」と回答された方々の多くは、現在賃貸住宅に住んでいると想像できます。「このまま賃貸」か「いつかは所有」なのか、動向に注目しておきたいものです。
男女別で回答をみれば、「土地・建物については、両方とも所有したい」と答えた男性の割合は67.6%(昨年は69.3%)、女性は62.5%(昨年は61.8%)。例年、男性の方が高くなっています。男女ともに「持ち家志向」は減少傾向にはありますが、性別の差は、男性の方が「住宅の所有意欲」が高く、「住宅」という資産に関する考え方に多少の違いがあるものと思われます。
一方で、賃貸志向では、「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」の回答では男性16.5%、女性18.4%となっています。こちらも例年女性の割合が高い傾向です。
また、「わからない」と回答した男性は9.8%(昨年は10.4%)、女性は11.8%(昨年は16.4%)となっています。昨年は大きな差が出ていましたが、今年は性別による差はやや縮まりました。
次に、人口規模で違いを見てみましょう。
政令指定都市における「借家(賃貸住宅)で構わない、又は望ましい」の回答は、20.8%(昨年は23.2%)で全国の17.5%を上回っています。大都市部では若年層が多く、都市部での賃貸志向が相対的に強いと考えられます。また、「土地・建物については、両方所有したい」と回答した人の割合は、10万人未満の市に住む方の方で割合が高く、全国では65.0%のところが69.1%(昨年は72.8%)になっています。
三大都市圏に住む方が5割を超えている現在の我が国では、こうした調査結果を見ていると、さらに賃貸住宅志向が進みそうな状況といえそうです。
持ち家志向の低下の背景には、以下のような要因があると思われます。
といったところでしょうか。
また、賃貸と所有で迷う方においては、近年の住宅価格の著しい上昇というのは、近年の住宅価格の著しい上昇は、二の足を踏ませる大きな要因でしょう。