専門家コラム

【不動産の法律_6】 サブリース契約の終了を求める場合の問題

【不動産の法律_第6回】 サブリース契約の終了を求める場合の問題

1.はじめに

前回のコラムでは、サブリース契約において賃料が実際に「保証」されるのかという点を中心に、オーナー様がサブリース契約を締結する場合に注意を要する点などについて説明いたしました。
 
最近は、サブリース契約に関連したトラブルが増加傾向にあり、オーナー様におかれても云わば自衛策を講じる必要性が高くなっているかと思います。こうした点に鑑みて、今回のコラムでも、前回に引き続きサブリース契約について取り上げてまいります。
 
今回のテーマは、サブリース契約の終了をオーナー様が求める場合の問題点です。
 
 

2.サブリース契約の更新拒絶や解約申入れを行う際のハードル

(1)サブリース契約書では、通常の賃貸借契約書面と同じように、賃貸借期間の定めがあり、更新拒絶や解約申入れについて定められている例が多いかと存じます。それでは、オーナー様から見てサブリース契約の内容や事業者との関係等で満足できないなどの事情から、サブリース契約の更新拒絶や解約申入れをしたいと思われた場合、契約書の条項に従って簡単にサブリース契約を終了させることができるのでしょうか。
 
結論から先に申し上げますと、そう簡単ではないということになります。
 
(2)サブリース契約の終了について考える際に重要な借地借家法の条文があります。借地借家法28条です。同条は、建物の賃貸人が契約の更新拒絶通知や解約申入れを行う場合について、賃貸人において建物の使用を必要とする事情のほか、建物の利用状況、建物の現況、立退料等の財産上の給付の有無や金額といった諸般の事情を考慮して「正当の事由」がある場合でない限り、契約の更新拒絶通知や解約申入れを行うことができない旨定められています。この借地借家法28条がサブリース契約にも適用されるのであれば、更新拒絶や解約申入れするには「正当の事由」が必要ということになるのです。
 
この点については、前回コラムでもご紹介した最高裁平成15年10月21日判決が、サブリース契約も賃貸借契約の一種であって借地借家法が適用されることを前提としています。また、その他多数の裁判例が、サブリース契約には借地借家法28条も含め借地借家法が適用されると判断しています。その帰結として、オーナー様がサブリース契約について更新拒絶や解約申入れを行うには、「正当の事由」が必要とされるのです。
 
オーナー様の中には、「サブリース契約書の条項に更新拒絶や解約について規定しているのだから、契約を終了させることも簡単だろう。」と思われている方も場合によってはいらっしゃるかもしれません。しかし、契約書上には書いていない借地借家法が適用されると裁判所が判断しているため、「正当の事由」が必要とされることになり、契約終了が必ずしも簡単ではないことも多い点にご留意いただきたいと存じます。
 
 

3.「正当の事由」の判断要素

借地借家法28条の「正当の事由」の中心となる要素は、賃貸人において建物の使用を必要とする事情と、賃借人(サブリース契約の場合には、賃借人であり転貸人であるサブリース業者)において建物の使用を必要とする事情です。賃貸人と賃借人、それぞれに建物の使用を必要とする事情があるかが問題とされるのです。この、建物の使用を必要とする事情及び程度をメインの要素としつつ、建物の利用状況や建物の現況(例えば、老朽化が進行しているので契約を終了させ、立て替える必要があるなど)、契約期間中の賃借人の不信行為や立退料等の申出がサブの要素として勘案されることになります(最高裁昭和46年11月25日判決参照)。
 
なお、これらは「要件」ではなく「要素(ファクター)」です。要件の場合には、要件が揃うか揃わないかで、契約終了が認められるか認められないかといった法律上の効果がダイレクトに変わりますが、要素の場合には、「諸々の判断要素のひとつ」という意味合いのため、契約終了が認められるか否かといった法律上の効果が一義的に決まるとは限りません。そのため、具体的な個々の事案における判断の見通しにも、ある程度の幅が生じることになります。
 
 

4.「正当の事由」はどのような場合に認められ、どのような場合に認められないか

(1)上記3の後半でご説明したように、借地借家法28条の「正当の事由」がどのような場合に認められ、認められないかについては、個別具体的な事情が要素となるため、裁判所の判断にも一定の幅が見えるところです。
 
今回は、裁判例を幾つかご紹介することで、裁判所の判断の傾向をご説明したいと思います。
 
(2)まず、建物使用の必要性について、賃借人=転貸人であるサブリース業者側に関しては、自ら倉庫で使用する場合に限らず、転借人(店子)に対する転貸を通じて転貸利益をあげることも建物の使用の必要性を基礎づけるとした裁判例があります(東京地裁平成19年5月16日判決、札幌地裁平成21年4月22日判決)。
 
転貸利益をあげることも建物使用の必要性を基礎づける要素になるとしたこの裁判例は、賃借人=転貸人側からみて建物使用の必要性の間口を広めに認めたものと考えることができます。
 
また、賃借人=転貸人の建物使用目的が専ら収益を上げることにあるサブリース契約であっても、解約申入れにおいて厳格な正当事由が必要でないと考えることはできない旨判断した裁判例(東京地裁平成20年8月29日判決、東京地裁平成24年1月20日判決)もあります。
 
この裁判例も、サブリース業者側の収益を上げるという目的が建物使用の必要性の要素にあたることを前提としつつ、それでもなおオーナー側が契約を終了させることのできる「正当事由」は厳格に判断するという姿勢を示したものです。サブリース契約であるからといって、「正当事由」が緩やかに解釈されることはなく、通常の賃貸借契約と同様に厳格に判断されることになります。
 
このように、転貸利益を追求するサブリース業者が賃借人=転貸人であるという事実は、契約を終了させようとするオーナー様側には特にプラスに働くわけではないと考えられます。
 
以上の裁判例を前提にすると、オーナー様がサブリース契約の終了を進めるためには、まずはオーナー様に建物を使用する必要性が真にあることを証拠等で示したうえで、建物使用の必要性が高いことをしっかりと示していくことが前提として必要です。仮に裁判に発展した場合でも証拠を示してしっかりと立証できるよう、事前に証拠固めをしておくことが大切と言えるでしょう。
 
さらに、オーナー様だけでなくサブリース業者側にも建物使用の必要性が認められ、メイン要素だけでは決着がつかない可能性が高いことを見越して、サブ要素についても事前に対応することが非常に重要と考えます。
 
(3)サブ要素である立退料等の支払については、サブリース契約上に定められていた解約に伴う違約金相当額を供託した事案において、賃貸人(オーナー)側の建物使用の必要性が低い場合には、違約金相当額が供託されただけでは正当事由が認められないとした裁判例があります(東京地裁平成19年12月7日)。
 
この裁判例は、メインの要素である建物使用の必要性について、賃貸人側に必要性が低いと判断したうえでのことではありますが、違約金相当額が供託されただけでは正当事由が認められないと言及している点に留意が必要です。この裁判例を前提にすると、オーナー様が契約終了方向に進めるにあたっては、サブ要素である立退料等の支払を主張するために、解約に伴う違約金相当額のみではなく、更に金額を上乗せして立退料として提供することも検討対象になるでしょう。
 
(4)また、サブリース契約において、仮にサブリース契約の賃貸借契約が終了しても、賃貸人が転貸借契約を承継し、転借人(店子)が建物の使用を従前とおり継続できる旨の規定がある事案において、こうした規定とおり転借人が建物使用を従前とおり継続できる場合には、転借人が保護されることから、特段の事情のない限り解約の正当事由が肯定される旨判断した裁判例があります(東京高裁平成14年3月5日判決)。
 
この裁判例から考えると、サブリース契約中に、仮に契約が終了したとしてもオーナー様において賃借人=転貸人と転借人間の転貸借契約を承継し、従前とおり建物を使用できる旨の条項を設けている場合や、仮に条項を設けていなかったとしても転借人の保護を図る場合には、正当事由が認められる可能性は高まると考えられます。
 
(5)以上のとおり、まず大前提として、オーナー様に建物使用の必要性があること、その程度が高いことをそれぞれ立証できることが必要になります。それに加えて、立退料の支払申出や転借人の利益を保護する姿勢を示すことにより、サブリース契約の終了が認められる可能性を高めることを目指す、ということになると考えます。
 
なお、前回のコラムでも紹介したように、サブリース契約を定期借家契約とすれば、期間の終了により契約を終了させることは可能です。ただ、定期借家契約とすることのデメリットも一方で存在するので、定期借家契約形式を選ぶのか、それとも「正当事由」が認められないリスクは一定程度受け入れて普通借家契約形式を選びつつ、いざ契約を終了させる場合にはリスクを低減させる方向で考えるのか、それぞれのメリットとデメリットを勘案しながら検討することが重要かと存じます。
 
 
 


弁護士 今井 智一(いまい ともかず)
 今井関口法律事務所 代表弁護士
 URL: http://lawoffice.co.jp/
 
・東京大学経済学部経営学科卒業、東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻(法科大学院)修了
・東京弁護士会(第63期)
・栗林総合法律事務所及び清水直法律事務所を経て、2018年3月、銀座に今井関口法律事務所を開設
・株式会社エル・エム・ジー(LMG) 社外監査役(2016年~)
 
各種不動産取引は勿論のこと、企業法務分野を中心に幅広い経験を有している。

 


 
 

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