賃料価格の上昇に期待が高まる? 2023年不動産投資の重要ポイント
専門家コラム

賃料価格の上昇に期待が高まる? 2023年不動産投資の重要ポイント

2023年がスタートしましたが、昨年末の日銀による金融緩和政策の一部転換が見られたことで、「この先どうなるのか」と不安を抱えている方も多いと思います。

世界的に、経済動向や株価や債券市場、不動産市場が「先の見えにくい」状況になってきています。こうした状況はこれまでもありましたが、決して不安にならずに丁寧に状況を分析することで、「不動産投資の取るべき方策」が見えるでしょう。今回は、2023年の不動産投資で抑えておきたいポイントをお伝えします。

広まる、金利上昇を前提にした動き

1月17-18日に開催された日銀金融政策決定会合では、政策金利、国債の買い入れの上限金利などの主だった金融政策が据え置きとなりました。

前回(22年12月20日)の会合では、金融緩和政策の一部見直しがサプライズ的に行われたこともあって、「今回も再び何か政策の変更があるかもしれない」との憶測が広まっていましたが、今回は据え置きという決定となりました。

しかし、昨今の物価上昇を受けて、「そのうちに、政策金利は上昇する」「国債買い入れ上限金利の幅が広がる(=上がる)」と予想する関係者は多く、それを前提とした動きが活発化しています。

長期(10年物)国債の金利上昇に伴い、住宅ローンや不動産融資における固定金利は上昇しました。一方で、多くの方が利用する変動金利は、短期プライムレート(※1)に連動するとされていますので、大きな変化がないのが現状です。

物価の上昇は続くも、インフレは起こっていない?

物価の上昇は続いています。22年12月の全国消費者物価指数(23年1月20日総務省発表)では、変動の大きい生鮮食料品を除いた指数は前年同月比プラス4.0%と高い伸びとなりました。特に生鮮食料品をのぞいた食品だけをみればプラス7.4%(1976年8月以来の高さ)、ガス代や電気代はプラス20%を超えています。

2022年の年間をみれば、生鮮食料品を除いたもので、プラス2.3%となりました。

確かに物価上昇は続いていますが、輸入原材料費の高騰、エネルギー価格の高騰、そして円安基調にあること、という「コスト」の上昇の影響が極めて大きくなっています。

本来、物価上昇つまりインフレが続く状況というのは、需要が大きく増えその好循環の中で賃金上昇が続くというサイクルが起こった時に起こる現象です。

しかし、我が国の需要と供給のバランスを見ると、需要がまだまだ足りないということが分かります。内閣府が22年12月7日に発表した数字では、22年7-9月期の需給ギャップはマイナス15兆円(年換算)と需要が15兆円足りない状況です。

ちなみに、4-6月期のデータでは、マイナス13兆円でした。こうしてみれば、供給過剰ということになり、「インフレ状況にない」、ということができます。しかし、供給する企業サイドでは、「さすがにこれだけ製造原価が上がると耐えられない」として、値上げが起こっているわけです。

その状況を見て、「じゃ、我社も」と多くの企業が一斉に値上げを始めました。こうした動きは、23年4月-5月頃まで続くと思います。

しかし、値上げは消費の低下をもたらし、企業業績の悪化につながります。また、一時は150円を超えるドル円相場も、130円前後(1月20日)となり、この先はアメリカの金利上昇が落ち着くと思われますので、円安から円高に振れるようになりそうです。

こうした状況が整う、今年の夏ごろには物価上昇がおさまってくるでしょう。

金利上昇の可能性はあるのか

このような状況から判断すると、この先の金利の見通しは、23年の春から夏にかけて、金利はわずかに上昇する可能性が多少あると思われます

。日銀が決める政策金利を上げる可能性は低いと思いますが、国債買い入れの上限金利は±0.75%になる可能性は少しあると思います。しかし、年間を通じてみれば、「少し上昇して、その後横ばい」と、あまり気にならない状況を予想しています。

賃料(家賃)の値上げ期待

一方で期待したいのは、賃料(家賃)の上昇です。消費者物価指数の構成要素の1つに「民営家賃」があります。過去の例をみれば、物価が上がればやや遅れて(賃料の遅行性といいます)、家賃が上がっています。

家賃が上がれば、僅か程度の金利上昇分は、十分相殺することができますので、家賃動向には注目しておきたいものです。

まとめ

こうしてみれば、23年中は、金利の動向に注視しつつ不動産投資を行うことが求められます。過剰な報道に惑わされず、冷静な判断をしながら、不動産投資を行って欲しいと思います。

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

  1. 銀行が最優良の企業(業績が良い、財務状況が良いなど)に貸し出す際の最優遇貸出金利(プライムレート)のうち、1年以内の短期貸出の金利を「短期プライムレート」(略して「短プラ」)といいます。[]
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