2023年04月28日(最終更新:2023年06月20日)
社会・経済活動の回復により、地価の上昇幅は拡大しています。3月22日に国土交通省より発表された地価公示で、東京23区は住宅地、商業地ともに変動率がプラスとなり、前年よりも変動率も上昇しています。
国土交通省「地価公示」(引用)
東京23区における住宅地地価は前年比3.4%の上昇で、前年の+1.5%から上昇率が拡大しました。また、東京23区の調査地点の中で、前年との比較が可能な継続地点 1,575地点のうち、99.4%に当たる1,566地点が上昇し、下落した地点はありませんでした(残りの9地点は横ばい)。
商業地は、23区全域の変動率は3.6%となり、前年の0.7%から上昇幅が大きく拡大しました。全23 区で変動率がプラスとなり、うち3区はマイナスからプラスに転じています。東京23区の商業地では、再開発事業が進展しているエリアを中心に、地価の上昇率が拡大しています。
東京都「地価公示価格東京都分」(引用)
上のグラフは、東京都地価調査の基準地と同一地点である標準地について、平均変動率を見たグラフです。新型コロナウィルス感染拡大直後は、住宅地・商業地ともに大きく落ち込みました。特に、商業地が大きく打撃を受ける形で、その後も地価の回復が住宅地よりも少し遅れていましたが、2022年地価公示頃から、両者とも上昇が加速している状態です。
次に23区別で住宅地を詳しく見ていきましょう。
東京23区の住宅地はエリア全体では前年変動率プラス3.4%となっており、すべての区で2%以上の上昇率となりました。23区内で最も上昇率が大きかったのは台東区のプラス4.8%、次いで豊島区プラス4.7%、中野区プラス4.6%でした。2022年が都心での地価上昇が顕著でしたが、2023年は、都心周辺の利便性の高いエリアでの地価上昇が目立ちました。テレワーク等の普及で在宅時間が増え、より良い住環境を求めるニーズが増えてきており、都心以上に周辺部の地価上昇が顕著になっています。
具体的にどのようなエリアで大きく地価が上昇したのでしょうか?
上昇率が8.1%で1位だった「足立区綾瀬1-32-3」は、東京メトロ千代田線の綾瀬駅すぐ近くに位置します。始発電車もある駅でありながら、大手町まで乗り換えなしで20分という交通利便性の高さがありながら、スーパーや子育て施設も充実しており生活利便性も高いエリアです。2位の「千住緑町1-2-1」は、京成電鉄本線「千住大橋」駅徒歩約3分、また、3位の「東日暮里1-3-2」は、東京メトロ日比谷線「三ノ輪」駅徒歩約2分と最寄り駅に非常に近いエリアです。
このように、交通・生活利便性が高い割に、お手頃感があるエリアで今回地価が大きく上昇しています。共働き世帯の増加で、世帯収入が増えていることを背景に、金利状況が大きく変わらない状態が続くならば、首都圏の住宅需要は引き続き根強いと見られ、都心周辺エリアでの地価上昇は、暫く続くと見られます。
一方で、都心エリアはどうかというと、都心3区でも中央区はプラス4.0%、港区プラス3.6%、千代田区プラス3.2%と上昇を続けています。依然として、高級マンションへの需要は底堅く推移しており、地価上昇を下支えしている状況と言えます。
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