2023年07月18日(最終更新:2023年07月18日)
7月3日に国税庁より、「路線価」が発表されました。路線価とは、主要道路に面する土地の1平方メートル当たりの価格を言います。
国税庁が毎年1月1日時点の価格を7月1日(今年は土日を挟んだため3日)に発表し、相続税や贈与税や固定資産税などの算定に使われます。相続税はそもそも、財産を「時価」で評価することを定めていますが、現金や上場株などと違って、土地の「時価」を把握することは難しいという現状があります。
そのため、国税庁が原則として路線価に基づく算定を認めています。
それでは、路線価について詳しく見ていきましょう。
まずは、都道府県別の平均値を見ていきます。全国平均は前年比1.5%の上昇で、前年の0.5%から1ポイント上昇しました。また、前年マイナスだった兵庫県、茨城県、秋田県、山形県、岩手県などの5県が、プラスに転じています。
出展:東京国税局「令和3年分 相続税の申告事績の概要」
上昇率が上位となったエリアについて細かく見ていきましょう。今回、上昇率が6.8%と最も高かった北海道は、コロナ禍で一時若干落ち込んだオフィス市場が勢いを取り戻しています。
三鬼商事株式会社公表の最新「オフィスマーケットデータ」によると、2023年5月時点の札幌市ビジネス地区の空室率は2.3%で、その他の都市、東京(6.16%)、仙台(5.79%)、横浜(6.67%)、名古屋(5.44%)、大阪(4.92%)、福岡(5.75%)と比べても、札幌がかなり低くなっているのが分かります。
上昇率2位の福岡県も福岡市中心部の再開発が進んでいることが価格を押し上げており、また、福岡市と周辺の地域で住宅の需要が強いことも上昇の背景にあるとみられます。
3位の仙台でも、オフィス需要の持ち直しが追い風となっています。宮城県内の最高額は仙台市青葉区中央1丁目の「青葉通り」の347万円と、前年より2.4%上昇しています。
続いて、東京都でもっとも高い「中央区銀座5丁目 銀座中央通り」、「鳩居堂」前の銀座中央通りの路線価推移について見ていきましょう。
皆さんもご存じの通り「鳩居堂」前は、全国でも路線価が最も高く、今年で38年連続の首位となります。1平方メートルあたり路線価は、4,272万円でした。
鳩居堂前の変動率は、3年振りに上昇に転じました。新型コロナウィルス禍で落ち込んだインバウンドが回復傾向にあり、路線価にもその状況が反映されつつあると言えます。数値としては、コロナ禍直後の2020年の1.1%を超えていますが、コロナ前の2019年の2.9%にはまだ及んでいません。しかし、来年以降は更なる上昇が見込める状況と言えます。
冒頭に述べた通り、路線価は相続税を算出する際、土地の価格の基準となります。そのため、路線価が高くなるということは、相続税も高くなってしまうと言えます。ここでは、実際の相続税の申告状況を見てみましょう。
東京都では亡くなった方のうち、18.1%の方が相続税の申告書提出が必要となる状況でした。そのうち、実際に相続税を納税した相続人は5万人を超え、その税額は一人当たり平均3,229万円でした。
相続財産の内訳をみると、最も大きな割合を占めるのが「土地」の36.5%でした。東京都は、路線価が他のエリアに比べて高いため、相続財産の割合としても高くなっています。
ちなみに、全国で見ると最も高いのが「現金・預貯金」の34%、で「土地」は33.2%でした(R3年)。東京都での「土地」保有が、相続税全体に与えるインパクトの大きさが分かります。
今後、路線価上昇が見込まれるエリアに不動産をお持ちの方は、適切な節税対策が必要となるでしょう。
収益不動産ONLINE編集部
収益不動産分野のシンクタンク「収益不動産総研」が運営しています。不動産投資に役立つあらゆる情報をお届けします。収益不動産をこれから購入する方、すでにお持ちの方が成功に近づくためのノウハウを提供しています。