【投資の極意 第66回】賃貸住宅市場も回復傾向に?賃貸住宅市場の景況感
不動産コラム

【投資の極意 第66回】賃貸住宅市場も回復傾向に?賃貸住宅市場の景況感

今回は公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が発表する「日管協短観2022年度データ」の調査結果より、賃貸住宅市場について考察していきましょう。本調査は、日本賃貸住宅管理協会の会員(賃貸住宅管理会社)を対象に、賃貸住宅の景況感を定期的に調査したもので、2022年度は541社の回答結果がまとめられています。

本調査の結果は、最前線の肌感を数値化したデータといえます。また、滞納率や入居率、平均居住期間など、収支計画を立てるにあたって重要な指標もありますので、不動産投資を行う方々にとっては注目すべき調査結果と言えます。それでは早速見ていきましょう。

コロナ禍からの回復で借主に柔軟な姿勢

まずはじめに、賃貸の成約状況について見ていきましょう。

成約件数(全国)

成約件数(全国)

出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」

成約件数が「増加」したと回答した割合が、2021年度の36.8%から2022年度は46.1%と大きく拡大しています。

回答項目を数値化したDI値(※DI値 = {([増えた]×2+[やや増えた])-([やや減った]+[減った]×2)}÷全回答数÷2×100)は、2021年度が6.5だったのに対し、2022年度は16.2と大幅に上昇しているのが分かります。コロナ禍からの回復に加えて、マンション価格の高騰が背景にあり、賃貸市場が活発化しているものと思われます。

次に、成約賃料についてみてみましょう。

成約賃料DI値(全国)

成約賃料DI値(全国)

上のグラフは、2021年度と2022年を比較したDI値です。全体では、2021年度が2.0だったのが2022年度は13.2と大きく拡大しています。特に、2021年度で-5.8だった1R~1DKが2022年度では3.8とプラスに改善しています。

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会によると、「成約賃料の上昇要因としては、新築を中心とした建築関連の物価上昇の影響により賃貸市場における利回りが低下したこと、テレワークの普及といった業務形態の変化により賃料が多少上がってもより広いスペースやより充実した設備を求める層が増えてきたことなどが要因と思われる。」としています。

借主側の物価上昇に対する柔軟な姿勢が見受けられます。このグラフには表記がありませんが、「入居希望者からの条件交渉」のDI値も、2021年度の17.6から2022年度は10.5に縮小しています。

滞納率は過去最低水準に

次に家賃滞納率について見ていきましょう。

月末での2ヵ月以上滞納率(全国)

月末での2ヵ月以上滞納率(全国)

月末で2ヵ月以上滞納となっている割合の推移です。なお、本調査は2021年度調査から、年に2回から1回の調査に変更となっています。2022年度の月末2ヵ月以上滞納率は、0.3%で集計開始以来、最も低い水準となっています。コロナ禍からの景気回復で支払いが滞ってしまう状況が減ったことも一因であると見られます。

※入居率及び滞納率は、回答社ベースではなく管理戸数ベースでの算出方法とした(滞納率は今回から集計方法を変えたため、前年比較はなし)。また、滞納率は、入居戸数に対する滞納戸数の割合であり、家賃債務保証会社からの代位弁済も滞納戸数とした。2 ヶ月滞納は60 日以降でも入金されないものを指す。

次に入居率です。

入居率の推移

入居率の推移(2009年~2022年)

2009年から2022年までの管理形態別の入居率推移です。サブリースで97.3%、委託管理は94.0%で、委託管理は最も高い数字となりました。

平均居住期間は4年1カ月

最後に、平均居住期間について見ていきましょう。全国平均は4年1カ月でした。単身世帯の平均が3年3カ月で、ファミリー世帯は5年2カ月と最も長期となりました。平均居住期間については、どのタイプでも前年度と大きな違いはありません。

賃貸住宅市場全体としては回復傾向に

ここまで、不動産会社へのアンケート結果をまとめた「日管協短観」をご紹介しましたが、賃貸住宅全体としては、好調な様子が随所に見られました。世の中の経済状況と賃貸住宅の景況感も深い結びつきがあります。

過去のデータを遡って、景況感が悪い時のデータで収支計画を想定してみるなど、シミュレーションをするにも役に立ちそうなデータです。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会のサイトには、より詳しい調査内容が公開されています。もっと詳しい情報を知りたいという方は是非ご覧ください。

参考:第27 回賃貸住宅市場景況感調査「日管協短観」2022年4月~2023年3月

利回り計算と管理会社選びの重要指標、 「入居率」を考える際のポイント
利回り計算と管理会社選びの重要指標、 「入居率」を考える際のポイント
不動産投資を行うにあたって、最も気になることは、「安定的に収入が入ってくるか」でしょう。 いうまでもなく、所有する物件に入居者がいてはじめて、そこから家賃収入を得ることが出来るわけです。そのため、「管...

収益不動産ONLINE編集部

収益不動産分野のシンクタンク「収益不動産総研」が運営しています。不動産投資に役立つあらゆる情報をお届けします。収益不動産をこれから購入する方、すでにお持ちの方が成功に近づくためのノウハウを提供しています。

メルマガ登録
セミナー申込