東京23区タワーマンションの竣工戸数推移 | 投資物件としての収益性を考察
不動産コラム

東京23区タワーマンションの竣工戸数推移 | 投資物件としての収益性を考察

タワーマンション人気は高まるばかりです。最近では、タワーマンションに住む主人公のテレビドラマが放映されて、「憧れのタワーマンションでの住まい」として描かれていました。

また、広い一戸建てに住む友人が、「息子(=大学生)が、一戸建てよりもタワーマンションに住みたいって言うんだよ。かつては、一戸建てに住むことが夢のマイホームって言われていたのに、今の若者は戸建てよりタワーマンションの方が憧れなんだよな..」とぼやいていました。

数年前から、タワーマンション上層階の取引価格と固定資産税評価額との差を利用した節税方法がもてはやされていました。しかし、こうした抜け穴的な方法が問題となり、タワーマンション上層階の固定資産税の見直しが行われることになりました。こうしたメリットが減ることになります。こうしたことを背景にタワーマンションを購入して、自ら住むことなく、「貸すために」購入する方も多く見られます。

タワーマンションの定義は、はっきりと決まっているわけではありませんが、概ね20階建て以上のマンションにことをイメージした超高層マンションをその外観からタワーマンションというようです。(所説あります)

1980年代後半くらいから、超高層マンション=タワーマンションがぽつぽつと建てられ始められましたが、1998年に建てられた(デベロッパーは大京)エルザタワー55が、55階立ての超高層マンションとして販売されそれを契機として、さらにはちょうど都心回帰の気運もあり、それ以降2000年代になって次第にタワーマンションが増えていきました。

いまでは、都心をはじめ多くの大都市に建つタワーマンションですが、その歴史は、まだ20年弱といっていい状況です。

なぜタワーマンションは増えたのか?

どうして、タワーマンションが増えたのでしょうか?その理由は、複数ありますが、その内の1つをご紹介します。

2000年代前半は、「持たざる経営」がもてはやされた時代でした。不要な不動産は持たない等、「オフバランスの推進」 こそが、「これからの企業のあり方だ」、という風潮が広まりました。
これにより、企業は、社宅や稼働率の低い工場用地の売却、あるいは工場そのものを地方都市に移し、そのあと跡地の売却などを進めます。

これらの中にはかなり広い敷地面積のものもありました。そこにタワーマンションが建ったのです。このような2000年代前半の社会的な背景、経営スタイルの変化から、首都圏にタワーマンションが増え始めました。

図1は2004年~17年までに建てられ20階建て以上のマンション(タワーマンション)の棟数と戸数(室)を示したものです。(不動産経済研究所調べ)
 

超高層マンション竣工戸数推移(東京23区)2004年~2017年

 
タワーマンションに住むメリットはいくつかあります。中~上層階においては、景色の素晴らしさがあげられます。
しかし、住んでいる方々の感想では、確かに、晴れた日の朝の爽快感や夜景に感動することはありますが、「しばらくすると、日常の景色となり、それが普通の情景」となるようです。

他のメリットとしては、

・タワーマンションはたいてい交通利便性がいいところに建っていることが多い。
・1棟当たりの戸数が多いため、相対的に管理費が安い
・共有スペースが充実している
・コンシュエルジュなど、大規模マンションならではのサービスが充実している

などを、あげる住人が多いようです。

一方、タワーマンションでは、共有部が多いためそのメンテナンスにかかる費用や高層建築のため外部清掃や修繕の費用が割高等、修繕費が意外に高いというデメリットを指摘する声もあるようです。
もちろん、管理組合は、修繕積立金を住人から徴収していますが、この先どれくらいかかるかの見通しが不透明で、いくらかかるか分からないと不安視する組合もあると聞きます。まだ20年弱という歴史の浅さが不安を煽っているのかもしれません。

投資用のマンションとしてのタワーマンションはどうでしょうか。タワーマンションを投資用に買う方は多くいらっしゃいます。一般的な投資マンションに比べて値段が高いことが多く、利回り的にネガティブな反面、人気がありますので入居者客付けは、楽なのかもしれません。

しかし、先に述べたように、修繕の問題、大規模改修の必要性等のため、修繕積立金の割り増しなど、想定外の出費がありえます。投資においては、「想定外」を極力減らすことが求められます。

こうしたことを考慮して、タワーマンションの1室を投資物件として検討するのは、慎重な姿勢で臨む方がいいと思われます。数億円するタワーマンションを投資マンションとして考えるのなら、(税の観点を除いて)、同じくらいの値段で買える1棟モノの収益マンションの方がメリットが大きいのかもしれません。

大都市圏のみならず地方でも続く建設計画 | 投資対象としてタワーマンションは増え続けるのか
大都市圏のみならず地方でも続く建設計画 | 投資対象としてタワーマンションは増え続けるのか
2000年代前半に登場「持たざる経営」 あるメディアの記事で、「今後5年間首都圏で建てられるマンションの3棟に1つは、タワーマンション(一般的に20階建て以上)」という記事を読んで、「売れるんだなぁ」...

社団法人 住宅・不動産総合研究所

https://www.hr-i.jp/

住宅・不動産分野のシンクタンク&コンサルティング会社です。単なる経営アドバイザリー業務ではなく、業績向上に寄与する実践型のコンサルティングを提供しています。社団法人としての公正性を保ちながらのデータ収集・分析から、経営のアドバイス、そして事業に欠かせないブランドイメージの組み立て、マーケティングツールの制作までをワンストップで行う専門性の高いサービスメニューで、大企業から中小企業まで幅広くバックアップしています。

メルマガ登録
セミナー申込