【吉崎誠二の不動産市況コラム】2026年基準地価(都道府県地価調査)を読み解く ~首都圏エリアの動向~
専門家コラム

【吉崎誠二の不動産市況コラム】2026年基準地価(都道府県地価調査)を読み解く
~首都圏エリアの動向~

9月15日に2026年都道府県地価調査(価格時点7月1日)の概要が国土交通省より公表されました。この調査結果により公表される地価は「基準地価」と呼ばれ、3月に公表される地価公示(価格時点1月1日)とともに、国内不動産市況を見るうえで重要な指標です。両者は調査時点が半年ずれていることから、相互に補完的な関係にあります。今回は全国的な動きを簡単に確認したうえで、首都圏(東京圏)の動向にフォーカスして読み解いていきます。

(注:データは「都道府県地価調査」国土交通省公表資料、および東京都公表資料より作成。)

全国の概況:東京圏・大阪圏と名古屋圏の差が拡大

全国平均では、全用途平均1.5%、住宅地1.0%、商業地2.9%の上昇と、いずれも5年連続で上昇しました。3大都市圏では東京圏・大阪圏で上昇幅が拡大した一方、名古屋圏では縮小しており、また、上昇率でみても、東京圏の全用途平均がプラス5.4%、大阪圏はプラス3.6%、名古屋圏はプラス1.9%と、差が広がっていることが分かります。大都市圏の間でも差がより鮮明になっています。

東京圏の全体概要

東京圏の住宅地はプラス4.0%(昨年は+3.9%、一昨年は+3.6%)で6年連続の上昇、商業地はプラス8.9%(昨年は+8.7%、一昨年は+7.0%)で14年連続の上昇となり、ともに上昇幅が拡大しました。

東京都:23区は全区で上昇、周辺区への波及が進む

東京都全域では、住宅地がプラス5.8%(昨年は+5.6%)、商業地がプラス11.4%(昨年は+11.2%)で、いずれも都道府県別トップとなりました。全用途平均はプラス7.9%で14年連続の上昇です。
都区部の住宅地はプラス8.7%(昨年は+8.3%)で、全23区がプラスとなりました。区別では港区16.3%、台東区15.6%、文京区13.8%が上位となっています。都心5区平均では13.2%、その他区は8.1%と、いずれも上昇幅が拡大しています。区部では調査したすべての地点で価格が上昇し、下落地点はゼロでした。
都区部の商業地はプラス13.3%(昨年は+13.2%)で、台東区が19.6%でトップ、北区と荒川区が16.9%で続きました。都心5区平均が13.5%(昨年は14.8%)と上昇幅が縮小した一方、その他区は13.3%(昨年は12.3%)と拡大した点です。あくまで上昇率の比較で、地価そのものは都心部の方が高いわけですが、都心の価格水準が高くなりすぎたことで、
需要が城東・城北などの周辺区へ広がっている様子がうかがえます。また、多摩地区の住宅地はプラス3.5%と昨年と同じ上昇幅でした。国立市7.5%、国分寺市7.0%、立川市5.6%と、中央線沿線の拠点性の高い街が上位を占めています。商業地もプラス5.6%(昨年は+5.3%)と上昇幅が拡大し、国立市9.6%、立川市9.2%が上位となりました。

周辺地域の状況

住宅地を都道府県別にみると、上昇率1位は東京都、次いで沖縄県、3位が千葉県(プラス3.4%)と続きます。千葉県では流山市がプラス13.3%(昨年は+12.5%)、松戸市がプラス8.9%(昨年は+8.1%)と、23区平均に匹敵、あるいは上回る伸びとなりました。流山市の住宅地平均価格は1㎡あたり23万3300円と、区部平均(84万2800円)の3割弱にとどまっています。都心へ直結する鉄道路線を持ち、価格水準が相対的に低く感じられるエリアに実需が向かっています。
神奈川県の住宅地でも広い範囲で上昇が続いています。商業地では神奈川県がプラス7.2%で都道府県別で3位でした。

地価上昇の背景と見通し

東京都の人口は1年間で約7.5万人増加しており、底堅い住宅需要を支えています。中古マンションの成約件数も26年1-6月期は前年同期比11.6%増と取引は活発がつづいていますが、価格上昇は多少落ち着きを見せているようです。
基準地価の上昇は続いており、首都圏では上昇幅も拡大していますが、伸びの鈍化も見え始めています。地価公示との共通地点で半年ごとの変動をみると、東京圏の住宅地は前半2.6%、後半2.3%でした。東京都区部の住宅地でも前半4.7%に対し後半4.2%と後半の伸びが小さく、東京都の比較可能な216地点のうち128地点で後半期の変動率が前半期を下回りました。
また、2025年度の東京都の新設住宅着工戸数は前年度比13.7%減、うち分譲マンションは39.2%減と大きく落ち込んでいます。建築費の高騰と金利上昇が、開発の「おもし」となっていることがうかがえます。政策金利は9月18日に1.25%へと今年2度目の利上げが行われましたが、今後も金利の上昇が続けば、住宅ローンを利用する実需層の購買力を抑える可能性もあります。 首都圏の地価はまだ上昇が続くとみられますが、都心から周辺区・近郊への波及が進む一方で、外縁部では勢いが弱まっており、エリア間の選別はより厳しくなるでしょう。名古屋圏や地方4市で見られるような上昇率の鈍化が、いずれ首都圏にも及ぶのかどうか、半年ごとの動きを注視していく必要がありそうです。

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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