2019年05月23日(最終更新:2023年06月07日)
近年、外国人投資家が日本の不動産を投資目的で購入するケースがとても増えているようです。具体的には、中国や香港、台湾、シンガポールなどアジア圏内の富裕層の投資家が中心です。
今回は、このような外国人投資家にとって、なぜ日本の不動産が魅力的なのか、その理由を考えることで、日本不動産の現状について見ていきたいと思います。
日本の投資家の中には、現状の利回りに物足りなさを感じている方もいるかもしれませんが、実は、外国人投資家の視点では、日本の不動産投資の利回りは非常に魅力的です。
近年、北京や上海、香港などアジアの都市では、不動産価格の高騰が続いています。以下は一般財団法人日本不動産研究所が公表している国際不動産価格の推移比較で、2010年10月時点のマンション価格を100とした時の各時期の数値を表しています。
これを見ると、北京などの都市でのマンション価格が上昇していることは一目瞭然です。
次に、賃料の推移はどうでしょうか。
先ほど挙げた3都市は賃料も上昇傾向にありますが、マンション価格の上昇程ではないようです。つまり、マンション価格の高騰が続く中で、自国の物件では思うような利回りを得られないため、海外に目が向けられるわけです。
カントリーリスクとは、投資対象国において、政治・経済の状況の変化によって混乱が生じた場合、そこに投資した資産の価値が変動する可能性のことをいいます。
不動産投資は、中長期的な不動産の所有になるので、この点が非常に重要になりますが、ご承知の通り日本のカントリーリスクは低水準です。OECDのカントリーリスク専門家会合が公表しているカントリーリスクランクでは、アジアでは日本とシンガポールだけが「Aランク」となっています(2019年02月12日時点)。
日本にいると、当然のこととしてメリットとして認識すらされていませんが、海外から見るとこういった安定性も高く評価されているわけです。
これは日本で不動産を行うに際して必ず認識すべき点ですが、地震リスク・人口減少リスク(賃貸需要下落リスク)については、外国人投資家も危惧している点です。
ただ、地震に対しては、物件選定や地震保険などで備えられますし、人口減少については本コラムでもお伝えしている通り、東京においては世帯数の上昇が予測されているため、エリアを間違えなければそれほど大きな問題にはなりにくいのです。
いうまでもありませんが、為替リスクも大きく関わってきます。
以上のような理由で、外国人投資家の日本不動産購入はしばらく続きそうです。このまま外国人投資家からの需要が高まれば、おのずと価格上昇に繋がります。
すると、今後、日本でも利回りが低くなってしまうかもしれません。また、一方で、現在はオリンピック前ということも後押しして、買いが進んでいる状況ですが、万が一、彼らが手放し、不動産が一気に市場に放出されれば、不動産価格が急落する危険性もあります。その点についても認識しておかなければなりません。
いずれにせよ、日本で不動産投資を行う人にとって、外国人不動産投資家の動向についても注目していった方がよいと言えます。
社団法人 住宅・不動産総合研究所
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