2023年06月26日(最終更新:2023年06月26日)
株式会社不動産経済研究所により、首都圏におけるコンパクトマンションについての調査結果が発表されました。
本調査でのコンパクトマンションの定義は、住戸専有面積が30㎡以上50㎡未満で、ワンルームマンションとファミリータイプマンションの中間に位置する物件と言えます。なお、本調査では投資用物件は含まれていません。
ワンルームでは狭いが、ファミリータイプでは広いと思う世帯、具体的には経済的に余裕のある単身者やDINKS、シニア世帯などがターゲットとされています。このコンパクトマンションですが、晩婚化や未婚化、高齢化など社会状況の変化にともない、人気が上昇しています。
まずは供給戸数を見ていきましょう。
出典:株式会社不動産経済研究所「首都圏・近畿圏コンパクトマンション(専有面積30㎡以上50㎡未満)供給動」
2022年の東京23区のコンパクトマンションの供給量は、1,911戸で全体の17.7%でした。シェアは年々拡大してきており、供給されるマンションのうち、5~6戸に1戸がコンパクトマンションという状況になっています。東京23区は、最も供給量が多いエリアとも言えます。
コンパクトマンションは2000年頃から数を増やしてきました。都心の利便性とファミリーマンションよりは手頃感のある価格、そして実需だけでなく投資目的での所有が受け、大手デベロッパーも多く参入しました。
また、冒頭に述べた通り、社会構造の変化で、単身者やDINKS、シニア層からのニーズや、東京への一極集中も重なり、コンパクトマンションの供給が更に拡大しました。
また、2021年度から住宅ローン控除の対象が床面積(内法面積)40㎡以上の住戸へ緩和されたことも供給増を後押しするとみられ、今後もシェアを拡大していくものと見られます。
次に価格を見ていきましょう。
コンパクトマンションの平均価格は年々上昇を続けていますが、特に2022年の平均価格は高騰しており、東京23区の平均は5,520万円でした。物件の内訳を見ると(以下、価格帯の内訳は首都圏全体での数値となります)、それまでは3.5%以下だった、7,000万円超の物件のシェアが2022年は10%に拡大しており、高額コンパクトマンション物件が平均価格を押し上げている状況と言えます。価格上昇には、コンパクトマンションの「立地」が深く関係しています。
参考:株式会社 不動産経済研究所「首都圏・近畿圏コンパクトマンション(専有面積30㎡以上50㎡未満)供給動」
コンパクトマンションは、ファミリータイプにはやや不向きな小規模な土地の上に建築されるケースが多いのが特徴と言えます。
また、コンパクトマンションは、単身者、DINKS、シニアをターゲットとしています。これらの層は、経済的に余裕があれば、ワンルームマンションよりもより広く、また、都心エリアなど立地のいいマンションを選ぶ傾向があるため、それらの層をターゲットとしているコンパクトマンションが、都心の比較的地価の高いエリアを選んで建てられることが多いと言えます。
よって、先ほど述べたようにコンパクトマンションの価格が高騰しているとも考えられます。
実際に、コンパクトマンションはどのようなエリアで供給されているのでしょうか。
上の表は、上位5区を、都心、城南、城北、城東、城西で色分けしたものです。これを見ると、コンパクトマンションは都心に多く供給されているのが分かります。下のグラフは、2019年からの供給戸数を合計したものですが、最も多いのは、台東区で884戸、次いで江東区が695戸ですが、注目すべきは次の中央区、港区、新宿区です。マンションの供給エリアで希少な都心エリアが、コンパクトマンションでは上位に入っています。
コンパクトマンションは、ニーズの多様化による需要の高さに加え、好立地でマンションが供給できるという供給側の思惑もあり、今後ともシェアが拡大していくものと見られます。
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