コロナ禍で分れる投資スタンス | 積極的な海外不動産投資家は日本の1棟レジデンスを狙っている
専門家コラム

コロナ禍で分れる投資スタンス | 積極的な海外不動産投資家は日本の1棟レジデンスを狙っている

すっかり秋になりました。9月19日からの4連休は、多くの方が外出し高速道路は稀に見る大渋滞で行楽地はどこも超満員だったようです。

平日も昼夜とも外食する方が増えてきて、街に活気が戻っています。しかし、「まだまだ、警戒を緩めるのは危険」として、慎重な行動をしている方もいらっしゃいます。いつ何時も、「積極派」もいらっしゃれば、「慎重派」の方もいらっしゃるものです。

日本国内における感染者数の増加が目立ってくるようになると、政府の要請もあって再び在宅勤務中心の勤務スタイルが戻ってきました。

不動産投資においても、今のようなご時世は、「慎重派」と「積極派」に大きく分かれます。「いまこそがチャンス」と考えるか、「この先不透明だから、STAY」と考えるのか、こちらも外出と同じように両方の方がいらっしゃいます。

慎重派が多い個人投資家(とくに、近年不動産投資をスタートしたような方)は、「いまは、投資のタイミングではない」として行動を起こさない方もいるようです。しかし、投資に慣れているような方は、コロナショック以前と変わらないスタンスで不動産投資に向き合っています。

一方、9月半ばのメディアの報道によると、「香港の大手投資ファンドPAG社が今後4年間の間に、日本の不動産を8000億円分購入する計画」という記事がありました。海外不動産投資専門家は、「日本の不動産は、相対的にまだまだ安い、買い時だ」と見ているようで、「積極派」のようです。このように現状においては、不動産投資のプロの中には積極的投資派が多いようです。

不動産投資の専門家が積極的投資を行う理由

では、どうして専門家の方々、あるいは不動産投資に慣れた方々は積極的な行動を起こしているのでしょうか?

1つ目の理由は、世界的な低金利の傾向です。日銀は、9月17日に「新政権と引き続き連携し、大規模な金融緩和政策を続ける」と発表。そして、その旗振り役の黒田日銀総裁は2023年の任期満了まで全うすると意欲を示しました。これは、実質的に2023年までは、現在の超低金利が続くということになります。
また、アメリカFRBは16日に、「少なくとも」2023年まではゼロ金利政策を続ける方針を明らかにしました。

日本・アメリカ政府とも、新型コロナウイルス対策による財政悪化懸念が高まることにより、国債金利上昇になると、市場に不安が広まりますので、「その不安を払拭する」という政策と言えます。

確かに、不動産投資市況は、コロナショックで数カ月間停滞しましたが、すぐに元に戻りました。「投げ売り物件が増えて価格下落、利回り上昇物件が増える」と予想した方もいるようですが、その気配は見えていません。

期待利回り(キャップレート)は、低い状況がつづいていますが、積極的に不動産投資を行う方は、現在のような超低金利が続くとなれば、たとえ投資利回りは低くても、調達金利(借入金利)との差(イールドギャップ)が一定分ありますから、十分に収益性があると考えているようです。こうした流れが、不動産投資市場の活況を支えているのです。

2つ目は、主要国に比べてまだ日本の不動産価格は安いと考えている海外の不動産投資専門家が多いという事です。価格上昇を続けるアメリカ主要都市、ロンドン、パリ、ベルリン、といった先進国の中心都市では数%の利回り程度に留まっています。

また、アジアに目をむけると、台湾、香港、の不動産価格は高騰しています。また中国の政治的な圧力により、香港、台湾等の富裕層は、保有不動産のリスクを感じて、自エリアの不動産の一部を高値の現在の間に売っておき、その資金で日本の不動産を購入することで、不動産資産の分散効果を狙っているようです。

しかし、すべての不動産が投資対象になっているかというとそうではなく、大きなお金を動かす機関投資家は大型ビルや物流施設といった数百億円以上の不動産に投資を行い、また一般的な富裕層は、1棟レジ(賃貸住宅)物件やヘルスケア(高齢者・介護・保育園等)物件が主たる投資対象となっているようです。

こうした資金が日本国内の1棟モノ賃貸住宅物件の価格の下支えになっているものと思われます。このような動きは、まだしばらく続きそうです。 

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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