2024年10月02日(最終更新:2024年10月02日)
2023年時点で、我が国のマンションストック数は694万戸を超え、特に都市部では多くの方々はマンションに住み、個人や法人が保有する資産としても、大きなウエイトとなっています。かつて、「マンションは管理を見て買え」と言われたことがありました。共有資産であり、1つの建物内での共同生活を営む場であることから、これらをとりまとめ、円滑に進める管理は極めて重要となります。
マンションの管理では、所有者が一致団結して自主的に行う「自主管理物件」もありますが、大半の物件は、マンション所有者で形成される管理組合が、マンション管理業者へ委託する形式で行われています。マンション管理業者は、1804社が登録されており(23年末時点)、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(通称:適正化法)」に基づき適正にマンション管理業を営む管理業務を行っています。
このような重要な業務を行っているマンション管理業者に対して、国土交通省では2005年より、毎年1回全国一斉立ち入り検査を実施しています。
2023年度(令和5年度)の調査では、全国の100の業者に対して調査が行われ、このうち29社に対して是正指導が行われました。是正指導率は29%で前回調査(22年)に比べて8.8ポイントの増、過去5年の平均(32%)よりは3ポイント下がりましたが、依然3割近くの業者が是正指導を受けているという状況です。
立入検査では、①管理業務主任者の設置、②重要事項の説明等、③契約の成立時の書面の交付、④財産の分別管理、⑤管理事務の報告、という5つの重要項目を中心に、検査が行われます。
是正指導事項別の件数は、「重要事項説明義務違反」が最も多く、次いで「契約成立時の書面交付義務違反」、「管理事務の報告義務違反」、「財産の分別管理義務違反」、「専任の管理業務主任者の設置義務違反」の順となっています。
管理業務契約締結、更新契約締結の前に行われるべき「重要事項説明書」がおろそかになっている現状が伺えます。
とくに分譲マンションでは、新築時に供給デベロッパー企業がマンション管理業者を決めていることがほとんどで、その多くはデベロッパーの関係企業です。そのため、初期は管理組合がまとまっていなく、意思を伝えることは難しいと思いますが、次第に状況は変化していきます。
管理組合が上手く機能している場合は、管理組合と管理業者が適宜やり取りを行い、要望を伝えるなどしているようですが、そうでないこともあるようです。
また、管理組合と管理業者との折り合いがつかず、マンション管理業者を変える(リプレース)事例も、一定数あるようで互いに緊張感を持った関係を続ける事で、適切な管理業務を享受することができるものと思われます。
こうした関係は、区分所有者の集合体である分譲マンションだけでなく、賃貸用住宅を一棟で保有している場合でも同様ですので、これから収益物件を保有しようと思われている方は、マンション管理業者選びは慎重に行い、時に要望を伝え、場合によってはリプレースを行うといった緊張感をもった付き合いが重要と言えるでしょう。