【吉崎誠二の不動産市況コラム】投資用マンション供給が増えている街は、人も増えているのか?
専門家コラム

【吉崎誠二の不動産市況コラム】投資用マンション供給が増えている街は、人も増えているのか?

不動産投資を行う際には、「どのエリアの物件を購入するか」は非常に重要なポイントです。物件価格や利回りと同様に、今後も賃貸需要が見込めるエリアなのか、その将来性を検討することが必要になってきます。今回の原稿は、2026年(令和8年)8月5日に不動産経済研究所が公表した「2025年の首都圏投資用マンション市場動向」と、令和8年5月29日に総務省が公表した「令和7年国勢調査 人口速報集計(10月1日現在人口)」をもとに各地域が集計した人口推計のデータから、投資用マンションの供給数と人口増減の関係について解説していきます。

2025年の首都圏投資用マンション市場動向

・2025年首都圏投資用マンションの供給戸数と供給件数(全国)

(株式会社不動産経済研究所「首都圏投資用マンション市場動向」より作成)

まず、2025年の首都圏における投資用マンション市場を見てみましょう。不動産経済研究所によると、2025年に首都圏で供給された投資用マンションは85物件・4,034戸となりました。前年の101物件・4,241戸と比較すると、物件数は15.8%減、戸数は4.9%減となっており、近年は減少傾向にあることが読み取れます。マンション適地の不足に伴う入札競争激化、それに伴う価格高騰が原因と考えられます。一方、平均価格は3,626万円と前年比0.8%上昇、1㎡当たり単価も136万6,000円と2.0%上昇しました。また、供給エリアは前年の34エリアから31エリアへと3エリア減少しています。

・供給戸数ランキング

(株式会社不動産経済研究所「首都圏投資用マンション市場動向」より作成)

こうした中、2025年に最も多く投資用マンションが供給されたのが東京都葛飾区の431戸です。続いて横浜市南区が399戸、東京都江東区が315戸となりました。上位3エリアだけで1,145戸となり、全体の約28%を占めています。また、上位5エリアは全体の供給戸数の43.4%を占めています。江東区と葛飾区は前年の2024年に引き続き上位5エリアにランクインする結果となりました。(江東区は前年1位で435戸、葛飾区は前年4位で306戸)
では、投資用マンションが多く供給されたこれらのエリアでは、実際に人口も増えているのでしょうか。今回は、1位の葛飾区と2位の横浜市南区を分析してみましょう。

葛飾区は「供給上位+人口増」

まず、供給戸数1位の葛飾区です。2025年に431戸の投資用マンションが供給された葛飾区について、令和7年国勢調査「人口速報集計」をもとにした「東京都の統計」によると、2025年10月1日時点の葛飾区の人口は46万7,614人でした。
2020年の人口は45万3,093人で、5年間で1万4,521人、3.2%の増加です。これは東京都の区市町村では3位の人口増加数となっています。つまり、葛飾区では投資用マンションの供給が多く、人口も着実に増加していることがわかります。賃貸住宅の需要はその地域で実際に生活する人がいることで生まれるため、このように供給戸数・人口がともに増加しているエリアでは、住宅需要の母数そのものが拡大していると見ることができます。ただし、ここで「人口が増えている=投資エリアに最適だ」と判断するのは早計です。431戸という大きな供給がある以上、今後は同じエリア内で賃貸物件同士の競争が強まる可能性もある点に注意する必要があります。

横浜市南区は「供給上位でも人口はほぼ横ばい」

一方、供給戸数2位の横浜市南区はどうでしょうか。2025年の投資用マンション供給戸数は399戸でしたが、横浜市の「令和7年国勢調査結果速報と住民基本台帳に基づく人口動態」によると、2025年10月1日時点の横浜市南区の人口は19万8,249人で、2020年の19万8,157人から92人の増加、増加率にすると約0.05%にとどまります。つまり、横浜市南区では「投資用マンションの供給は多いものの、人口はほぼ横ばい」という状況であることがうかがえます。投資用マンションが多く供給されているという事実だけを見ると、「人気が高く、将来性のあるエリア」と感じるかもしれません。しかし、実際に住む人の数がほとんど増えていないのであれば、今後も供給が続いた場合、既存物件との入居者獲得競争が強まる可能性があります。もちろん、人口が横ばいだからといって賃貸需要が弱いとは限りません。人口が変わらなくても、単身世帯が増えていればワンルーム需要が拡大するケースがあります。そのため、人口データはあくまでエリアの将来性を見るための一つの指標として捉える必要があります。

まとめ

今回は、2025年の投資用マンションの供給量と人口増減について解説しました。
投資用マンションを選ぶ際には、利回り等だけを見るのではなく、「その街にこれからどんな人が住むのか」という視点を持つことが、長期的な賃貸需要を見極める上で大切だということができます。投資用マンションの供給量や人口増減に加えて、世帯数、年齢構成、転入・転出、賃料相場、競合物件の供給状況なども合わせて確認することで、より精度の高い投資判断ができるでしょう。
※今回公表した人口及び世帯数は、区市町村から提出された要計表(調査区ごとの人口 や世帯数の集計表)を集計した速報値である。なお、確報値については、令和8年9月に総務省が公表する予定です。

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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