分譲マンションの賃料推移から、首都圏における賃料動向を考察
不動産コラム

分譲マンションの賃料推移から、首都圏における賃料動向を考察

収益不動産総研サイト内に、「不動産市況コラム」が始まります。本連載の執筆は、住宅・不動産総合研究所が担当いたします。どうぞよろしくお願いいたします。第1回目ですので、まず初めに不動産投資の最も基本的なことを確認しておきましょう。

キャピタルゲインとインカムゲイン、それぞれのポジティブ要因とネガティブ要因

1棟レジデンス投資、ワンルームマンション投資、その他のマンション投資には、いくつかのタイプがあります。いうまでもありませんが、不動産投資は値上がり益(=キャピタルゲイン)の期待と賃料収入(=インカムゲイン)の期待の2つの組み合わせから成り立っています。

それぞれの期待には、ポジティブ要因とネガティブ要因があります。キャピタルゲインでは、購入して以降、ずっと所持していると実際にはあまり関係ありませんが、一定期間保有して後に売却した際に、買値よりも上がる下がるという可能性があります。

上がる可能性もありますが、下がる可能性もありますので、そのリスクは覚悟しなければなりません。そのためには、値下がりしにくい物件の見極めが必要です。

賃料収入のポジティブ要因は、賃料の値上がりの期待です。ネガティブ要因は大きく6つありますが、代表的なものは、「空室リスク」と「賃料値下がりリスク」です。この6つのリスクについては、また回を改めて、本連載でお伝えしたいと思います。
 
それでは、本題に入りたいと思います。第1回目は、賃貸住宅賃料の最新動向と賃料とインフレーションについて検討してみます。

首都圏マンション賃料に上昇のキザシ

このところ、首都圏、その他大都市部のマンション賃料が少しずつ上昇しています。とくに、都心の分譲マンション賃貸物件でその傾向は顕著のようです。

本連載では、データを図表化したものを用いて解説することを、1つのウリにしています。今回は賃料データ図表を用いて解説します。公開されている賃料データはいくつかありますが、どれも傾向は同じですが、1つ目は、「動きが見えやすい」 分譲マンションの賃料データを用います。

分譲マンション賃料推移(募集賃料ベース)

図1を見ると、2017年の半ば頃から、首都圏、中部圏、いずれも上昇基調にあることがわかります。関西圏も、やや遅れて上昇ムードになっています。

好景気が長く続いていること、それに伴い求人倍率の上昇が続いていること、大都市圏に人口流入が増えている事、などが主な理由でしょう。

景気拡大は2013年頃から続いていますが、賃料は2017年頃からの上昇です。賃料には「粘着性」、「遅行性」という特性があり、これは、一般的に景気動向に敏感に反応するのではなく、また地価や不動産価格の上昇に遅れて、その影響が表れるという意味です。この傾向がはっきりと出ています。

次に、全国の賃料を見てみましょう。2つ目の図表は、CPI(消費者物価)調査データです。

CPI民営家賃(全国)の推移(2015年=100)

全国の民営賃貸住宅(公団、社宅など以外)の賃料は2000年ごろから概ね横ばいから僅かに下落している状況です。都市部では上昇している賃料ですが、全国的に見るとそれほど大きな変化はありません。

特に地方都市の中でも過疎化が進んでいるエリアなどは家賃の下落も見られますから、全国平均では横ばい~若干の下落は仕方ないと思います。

需要と供給、賃料を決める2つの要因

賃料はどのように決まるのでしょうか?不動産鑑定での算出のような細かいことではなく、基本的な考え方としては、「需要と供給のバランス」で決まります。

供給が増えず、需要が増えれば賃料はあがり、逆の場合は下がります。それに加えて、民間家賃(一般的な賃貸住宅の賃料)は物価の1つですので、インフレ状況にも、賃料は影響を受けます。

近年の日本は、長くその傾向にありませんが、インフレーションとは物価が上がることです。例えば、100円の缶コーヒーが200円になると物価の上昇です。しかし、それは裏を返せば(缶コーヒーの中身が同じだとすると)、100円の価値が下がったということになります。つまり、インフレーションは紙幣、貨幣の価値の下落を意味します。

このインフレーション基調の下では、家賃も上昇基調になります。

具体的に見てみましょう。

インフレ率(コアCPI)とCPI家賃の前年対比の推移

 
図3は、1971年から2017年までの消費者物価指数の中のコアCPIと民営家賃の推移です。ちなみに、コアCPIは、消費者物価指数の中から、自然(天候等)の影響を受けやすい生鮮鮮魚、野菜、果物などを除いたものです。

図3の左半分をみれば分かるように、コアCPIと民営賃料はかなり同じような上昇下落の動きを示しています。1980年~2004年までの間のこれらの相関係数は0.77ですから、「かなり強い相関」の関係にあることが分かります。物価が上昇すれば家賃も上昇するということがわかります。しかし、近年は消費税増税以外での物価の停滞が続いているため、明確な関係は見えてきません。

今後の首都圏における賃料予想

この先、首都圏のマンション賃料はどうなるのでしょう。首都圏の分譲マンション価格(中古マンション)は2013年年初あたりから上昇を続けてきましたが、ここにきて2017年半ばごろからは、上昇カーブは横ばい基調になっています。一方、先に述べたように、近年首都圏の賃料は上昇基調にあります。

私の予測も含めて、民間シンクタンクの予測をまとめると、分譲マンション価格は現在がピークで、大きな下落はないものの、東京オリンピック後には少し値下がりすると思われます。

一方、マンション賃料は、首都圏とくに都心+その周辺部においては、これからもさらに上昇を続け、少なくとも2025年頃までは、上昇~そのまま横ばいが続くものと思います。

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