2020年プロパティ別の不動産市況を占う | 懸念される不安要因はあるのか
不動産コラム

2020年プロパティ別の不動産市況を占う | 懸念される不安要因はあるのか

今年も残すところあと2カ月となりました。少し気が早いと言われるかもしれませんが、今回は、2020年の不動産市況を占ってみましょう。(本原稿は10月末に書いています。)

2020年のビッグイベントは、なんといっても東京オリンピック・パラリンピックの開催です。世界中から1000万~1500万人の方々が日本を訪れると予測されています。
オリンピックは7月24日に開幕し、その後行われるパラリンピックまで含めると9月6日まで競技が続きます。

この間の都心の交通機関は大混雑が予想されており、大企業の中には都心のオフィスには通勤せず郊外にあるサテライトオフィスで勤務を推奨しているところもあるようです。
また、サテライトオフィスを持っていない企業の中には、例えば夏季休暇中の大学のキャンパスなどを借りることを検討している企業もあるそうです。

2020年の不動産市況予測

まず、最初に全体的な市況からお伝えすると、2020年の不動産市況は、概ね2019年並からやや上昇基調にあると思います。

2020年3月に発表される地価公示では、引き続き上昇となる公算が高い状況です。期間的にはバブル期に匹敵するような良好な不動産市況が長く続いています。

大都市部の地価の上昇率はやや小さくなるかもしれませんが、逆に、地方都市の不動産市況の回復、地価上昇地点の数の増加、など好意的な数字が並ぶと思います。
この傾向は、2021年後半から2022年くらいに一旦調整局面にはいると思いますが、それほど大きな落ち込みはなく、以降2025年くらいまで続くと予想しています。
というのも、不動産市況を悪化させるような要因は今のところあまり見られないからです。

もちろん、大きな自然災害や外圧による災害などが万が一起こった場合はこの限りではありません。

プロパティ別の市況予測

次にプロパティ別に予測してみます。

絶好調が続くオフィス市況ですが、2020年も引き続き好調が続くと思います。働き方改革が進み、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務、地方都市オフィスの新設などワークスペースの分散を進めていますが、それ以上に都市部での企業のオフィス拡大意欲が旺盛な状況です。

賃貸住宅ですが、貸家の建築数は2018年・2019年に引き続き減少が続くと思います。

一方、都市部における賃貸住宅投資意欲は旺盛な状況が続き、1棟レジデンスは高値が続くでしょう。
逆に、実需用レジデンス、つまり分譲マンション価格は、特に中古マンションを中心に価格調整局面が顕著になると思います。現在でもそのような兆候が少しずつ見えています。

その他のプロパティは、本サイトの主旨と異なるためここでは割愛します。

懸念される不安要因

では、懸念される材料はないのでしょうか。第一は、不動産市況に大きな影響を与える金利の動きです。

現在も史上最低水準の金利が続いていますが、もし金利が大きく上がると状況は一変すると思います。しかし、アメリカ、EUとも金利上昇気配はなく、2020年に大きく金利上昇することはないと思います。

次に、政治ですが、現在は安定的な政権運営が続いていますので、政策の大きな変更はないと思われます。

最後に、意外に影響のあるメディアのムードメイクですが、2020年はオリンピック一色になると思いますので、不動産市況におけるネガティブな報道もあまり出ないと思います。

こうして考えると、先に述べたように2020年の不動産市況は概ね良好と言えるでしょう。

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不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)

社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。

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