2021年11月17日(最終更新:2023年06月14日)
総務省が26日発表した2021年9月の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都は転出者数が転入者数を3,533人上回り、5カ月連続の転出超過となりました。
引用:総務省「住民基本台帳人口移動報告」より作成
転出者は28,684人と前年同月に比べて6%減り、転入者も25,151人で7%減りました。埼玉・千葉・神奈川の3県を含む「東京圏」では233人の転入超過となり、都内から隣県に移り住む人が増えていることを示していると言えます。
遡ってみると、人口一極集中が続いていた東京都は、新型コロナウィルスの感染拡大で人の移動が制限されていた2020年5月には、外国人を含めた統計が始まった2013年7月以降で初めて転出超過に転じました。その後も、入学や就職の動きが増える3月や4月を除き、21年は転出超過が続いている状況です。
新型コロナウィルス禍でテレワークが普及したことなどで、東京から近郊に引っ越す動きが広がっていると見られます。
次に、東京都の転入者数・転出者数を年齢別に見ていきましょう。
転入者では20~24歳が最も多く、次に25~29歳となっています。就職や転職、転勤で、東京都に来る若者が多いと見られます。なお、この層での転入者数が突出して多いという特徴は、今年に限ったことではありません。次に、2019年、2020年、2021年で比較してみましょう。
転入者数、転出者数ともに、年齢別にみたボリューム感は、それぞれの年で大きな違いはありませんが、やはり転入者数は全体的にマイナス、転出者数がプラスになっている様子が分かります。
次に、より詳細に年齢別の人口移動の変化を見ていきましょう。
新型コロナウィルス感染拡大前の2019年と2021年では年齢別の人口移動は、どれくらいの変化があったのでしょうか。
上のグラフは、2019年と2021年の1月から9月までの転入者数と転出者数の増減率を示したものです。黄色の転入者数では、全ての年齢層でマイナスとなっています。
特に、0歳から14歳の層と、30歳から45歳の層でマイナス15%近く、転入者数が減少しました。この0歳から14歳の層と、30歳から45歳の層のマイナスは、ファミリーでの転入が減少したと推察することが出来ます。
緑色で示した転出者数も2019年に比べて多くの世代で、上昇しています。中には、15歳~19歳の層で、-10%と減少する層もありました。
大学などで東京から地方に出る若者が減ったと見ることが出来ます。また、特筆すべきは50歳から59歳の層です。2019年と比較して、15%近く転出者が増えました。アーリーリタイアやデュアルライフなど、選択肢が広がった世代で、東京から地方に移動する人がとも考えられます。
ここまで東京都の人口移動について見て来ましたが、確かに東京都の人口移動は新型コロナウィルス感染拡大前と後では、様相が一変しました。
それまでは、東京の一極集中がかなり進行しており、「過去最大の人口流入」などとメディアでは取り上げられていました。しかし、新型コロナウィルス感染拡大を機に、テレワークの浸透によって、職場の近くに住む意味が変化しました。
そのため、2021年9月時点でも、5カ月連続の転出超過が続いています。しかし、年齢別で状況を確認してみると、ファミリー世帯や(アーリー)リタイヤ世帯などが多く、以前としてワンルームに住むと考えられる若者の数は、一定数あります。
不動産投資を考える時には、「人口」をひとくくりにせず見ていく必要がありそうです。
収益不動産ONLINE編集部
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