2018年09月27日(最終更新:2023年06月01日)
2011年3月に起こった東日本大震災以後、職人の方々が復興事業に従事するためか、職人の不足が言われてきました。
そんな中で2013年9月に東京オリンピック開催が決まります。オリンピック開催に伴う公共工事の増加でゼネコン業界はさらに大忙しとなりました。
それに加えて2013年以降不動産市況が好調な状況が続いていることでマンション・戸建て住宅がどんどん建てられています。大手ゼネコンはフル稼働が続き、その流れで中堅ゼネコンも繁忙を極めているようです。
さらに、大都市では中心地における再開発プロジェクトがどんどん進んでいます。東京都心ではビルの建て替えが進む、丸の内・大手町エリア、渋谷駅周辺、麻布台周辺、虎ノ門新駅開発、山の手線新駅(品川~田町間)開発・・、とくに渋谷駅周辺の再開発は2027年くらいまで続くビックプロジェクトで、すべてが完成すると渋谷の街は一変する計画となっています。
関西でも大阪梅田の北ヤード開発(うめきた2期)、なにわ筋新線にともなう開発、曽根崎周辺の開発など、インバウンド需要の好調を反映した計画が目白押しで、次々に再開発案件が進められています。(9月4日の大型台風の影響で関西の海外玄関口である関西空港が大きく傷んだのがこうした開発に水をささないかと不安ですが)
そして、その波及は地方都市にも広がっています。「近年の好景気は大都市部だけ」と少し前まで言われていましたが、「最近では、好景気が地方にも伝播している」が明確になってきました。こうした状況下では、否が応でも建設工事費は高騰してしまいます。
それでは、建設工事費がどれくらい上昇しているのかを見てみましょう。
上図は、国土交通省が発表している建設工事費デフレーター(住宅建築)の2005年から2018年上期までの推移です。(グラフは2011年を100として計算しています)
建設工事費デフレーターとは、(以下引用)
「建設工事に係る名目工事費を基準年度の実質額に変換する目的で、毎月作成、公表しているものである。建設工事費デフレーターは、国内の建設工事全般を対象としている。建設工事の多くは、現地一品生産という特性のため、一般の製品の物価のように市場価格の動きでは直接的にとらえることができない。そのため、建設工事費を構成する労務費や個々の資材費の価格指数をそれぞれの構成比(ウエイト)をもって総合する投入コスト型で算出する手法をとっている。」(以上、国土交通省HP内資料引用。
より詳しく知りたい方は、次のページを参考にしてください。
このグラフを見ると、住宅建築の建設工事費は2005年からのミニバブル期に上昇、特にリーマンショック直前の2008年には大きく上昇しました。また、確かに震災直後は一時的に上昇しましたがすぐに落ち着き、その後、2013年以降はずっと右肩上がりで上昇しており、2005年以降では最高水準にあります。
次に建設工事費と物価の関係を見てみましょう。
上図は建設工事費デフレーター(住宅建築)と消費者物価指数(天候要因などの影響が大きい生鮮食品を除く)、それぞれ2005年以降の推移を重ねたものです。
相関係数は0.81となっており、強い相関があることが分かります。建築工事費が上がっている時は、物価も上がっているという構図が見えます。
開発案件は今後も目白押しで、建設工事費の上昇はしばらく続くと思われます。これが、どこまで物価上昇、賃金の上昇につながるかはわかりませんが、こうした好景気が多くの人々の恩恵につながるといいと思います。
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