過去5年間の賃貸住宅着工数を考察! 2018年の貸家着工数の着地見込みはどうなる
不動産コラム

過去5年間の賃貸住宅着工数を考察! 2018年の貸家着工数の着地見込みはどうなる

そろそろ、年末が見えてきました。今年もあと1カ月と少し。最近では早くもクリスマスソングが流れ始めています。日の入りが早くなって、夜の時間が長くなるこの季節。不動産投資のことをじっくり考えるには最適な時季かもしれません。

今回の不動産市況コラムでは、過去5年間の賃貸住宅(貸家)の着工数の推移と2018年の月別着工数について考えてみたいと思います。

過去5年間の住宅着工数の推移

下図は2013年から2017年までの5年間の住宅着工数を示したものです。(上段数字は着工数、下段数字は前年対比です。)

住宅着工戸数は、いくつかのカテゴリーに分かれています。持ち家とは、一般的なイメージでは注文住宅です。貸家とは、賃貸用の住宅、分譲住宅とは分譲マンションと一戸建て住宅(土地建物セット)です。

2013年から2017年までの5年間の住宅着工数

2013年から2017年までの5年間の住宅着工数

 
特徴的な事を解説すると、貸家カテゴリー(賃貸住宅)は2013年~2017年連続してプラスになっています。(ちなみに、2012年もプラスでしたので、6年連続のプラス)

2014年4月から消費税が5%から8%に増税となり、経過処置期限が2013年9月末となっておりましたので、2013年には駆け込み需要が起こりました。実需用(自ら使用)持ち家カテゴリーをはじめ全体的に大きく伸びました。そして、翌2014年は大きな反動減が起こります。

しかし、貸家(賃貸住宅)はプラスになっています。これは、翌2015年1月から相続税の改正を控え、その節税対策として所有する土地に賃貸住宅を建てた方が多かったからです。この動きは都市部だけでなく、地方でもかなり見られました。

また、2016年はマイナス金利(低金利政策)の効果が顕著に見られて、貸家着工数はプラス10.5%と大きく伸びました。

では、次に2018年の貸家の月別着工数を2017年と比較しながら見てみましょう。

2018年の貸家着工数

2018年の賃貸住宅着工数は執筆時点(11月上旬)で9月分まで公表されていますが、昨年を上回った月は8月の1回だけであとは昨年の着工数を下回っています。このペースですと、2012年以降6年間続いた前年対比増が途切れることになりそうです。

貸家着工戸数 2017年と2018年の比較

貸家着工戸数 2017年と2018年の比較

上図は、貸家着工数の2017年と2018年の比較です。折れ線グラフは着工数で左目盛、棒グラフが前年同月比で右目盛りとなっています。

2017年は1月から5月まで前年同月比で大きくプラスでした。その後6月以降はマイナスになりますが、前半のプラスが効いて年間では僅かですが前年対比でプラスになりました。

2017年6月以降のマイナスは今年に入っても続き、特に前半の1から5月は昨年の数字が大きかったこともありかなりのマイナスとなりました。

折れ線グラフの実数を見ても、前半は大きなマイナスで梅雨時以降、差が縮まっていますが、それでもマイナスが続いています。

2019年10月から消費税が10%に増税されますが、その影響は「持ち家」カテゴリーで多少プラスの影響がでると思います。そのため総数は年末にかけて前年同月比でプラスになることも充分考えられます。この貸家カテゴリーは今後どうなるのでしょうか。

金融機関の融資審査の厳格化が言われてきましたが、これがこの先どうなるのかが大きな影響を与えると思われます。ただ、あまりネガティブに考えなくてもいいと思います。
というのも、今後も金融庁は地銀を中心に金融機関にたいして不動産融資の審査を適切に行うように指導するようですが、貸し出し規制を行っているわけではありませんので、適切な案件には融資が実行されています。

賃貸用不動産における適切な案件とは、かいつまんで言うと賃料の見込み、空室の見込み等が多少悪化しても、返済に十分耐えうる案件ということになります。つまり、賃貸需要が見込まれて、賃料が安定している(あるいは上昇可能性がある)エリアの賃貸物件に関しては、これまで通り融資が実行されると思います。

過熱気味だった賃貸物件への投資の中で、厳しい見込みの案件に対して高い金利で貸し出しをしていたものが減っているだけ、ということになります。そういう意味では「正常化してきた」ととらえるのが適切でしょう。

最後に、2018年の貸家着工数の着地見込みですが、昨年が約41.9万戸(前年対比+0.2%)でした。今年は、先に述べたように前半かなり落ち込みました。

夏以降多少戻してきていますが、前半のマイナスはカバーできそうにありません。そのため、貸家着工数は前年対比でマイナスになると思います。具体的にはマイナス4から5%程度、40万2,000戸から39万8,000戸程度になると予想します。

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