一般マンションの修繕積立金データから読み解く、一棟収益不動産の修繕計画のポイント
不動産コラム

一般マンションの修繕積立金データから読み解く、一棟収益不動産の修繕計画のポイント

一棟収益不動産の場合、全て自己の所有となるので、区分所有のように月々決まった積立金が徴収されるわけではありません。
そのため、購入した当初は、長期の修繕計画に向けた資金の積み立てまでなかなか考えが及ばない場合が多く見受けられます。

しかし、建物は年数とともに老朽化してきますので、定期的なメンテナンスや修繕がなされなければ、空室だけではなく、売却時の価格など出口戦略にも大きく影響を及ぼします。

今回は、一般的なマンションの修繕積立に関するデータをみていくことで、一棟収益不動産での修繕積立計画のポイントを探っていきたいと思います。

首都圏中古マンションの修繕積立金の1戸当たり平均は、月額10,392円

東日本レインズによると2017年度に首都圏中古マンションの月額管修繕積立金は10,392円でした。

建築年別 首都圏中古マンション月額修繕積立金(単位:円)

建築年別 首都圏中古マンション月額修繕積立金(単位:円)

出展:東日本レインズ「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金 (2018年度)」

次に、建築の時期別にみてみましょう。築年数が浅い方が修繕積立金が少なくなっています。これは、後述する「段階増額積立方式」で積み立てている場合が多いと考えられ、この方式だと建築当初は積立金が低く設定され、段階的に増えていくので、築年数が浅いと修繕積立金も低く設定されているというわけです。

規模別 月額修繕積立金

規模別 月額修繕積立金

次に、建物の規模別にみていきましょう。規模のメリットがあり、50戸以上は修繕積立金が下がりますが、200戸以上となると設備等も豪華にしているマンションが多く、修繕積立金は跳ね上がります。

長期計画は多くのマンション管理組合で設定されている

以下は、国土交通省が5年に一度行っているマンション総合調査のH30年の調査より、長期修繕計画の作成の有無をヒアリングした結果です。

長期修繕計画の作成有無 ヒアリング結果

長期修繕計画の作成有無 ヒアリング結果

出展:国土交通省「平成 30 年度マンション総合調査」

長期修繕計画の作成は徐々に増えてきており、9割の管理組合で長期修繕計画が作成されています。 

修繕積立金の積み立て方法

修繕積立金の積立方法には、「均等積立方式」と、当初の積立額を抑え段階的に値上げする「段階増額積立方式」があります。また、修繕時に一時金の徴収等を併せて行う場合もあります。

2つの積立方式のイメージ

均等積立方式と段階増額積立方式

国土交通省では「『段階増額積立方式』は、計画どおりに増額しようとしても、区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例が生じており、将来にわたり安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、『均等積立方式』が望ましい方式」(「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より)であると言っていますが、現状はどちらが多いのでしょうか? 

現在の修繕積立金の積立方式

現在の修繕積立金の積立方式

「その他」や「不明」を含めないと全体としては半々ですが、完成年次別内訳をみると、完成年次の新しいマンションほど段階増額積立方式となっている割合が多いのが分かります。今の主流は「段階的増額積立方式」のようです。

現在の修繕積立金の状況

現在の修繕積立金の状況

計画上の修繕積立金の積立額と現在の修繕積立金の積立額の差は、現在の積立額が計画に比べて不足しているマンションが34.8%となっており、そのうち、不足の割合が20%超のマンションが15.5%と多くを占めているのが分かります。

いざ、修繕となった時には、一時金として徴収する可能性があります。計画をしていても、「足りない」場合が多いにあるわけです。

計画が何よりも重要

まずは、自身が所有するもしくは所有を検討している一棟収益不動産の設備などから、おおよそどれくらいの修繕費がいつ頃かかってくるのかを把握することが重要です。その上で、ランニングコストとして修繕積立金をとらえ、収支計画を組むようにしましょう。

首都圏の月額平均管理費はいくら? マンション管理費と築年数との相関関係
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収益不動産ONLINE編集部

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