
2026年01月29日(最終更新:2026年01月29日)
日銀は12月19日に政策金利(誘導目標)を0.75%にすることを決めました。政策金利が0.75%になるのは1995年9月以来30年ぶり(当時は公定歩合)です。すべての金利の規準となる政策金利の上昇は、他の金利にも影響をあたえることになり、「金利のある世界」がさらに進んでいることをうかがわせます。投資家にとって金利の上昇は金利負担が増えることになりますが、そのほかの影響もあります。
消費者物価指数が3%程度の上昇率が続いていることなどから、政策金利の上昇は妥当な判断と思われますが、加えて円安が続いており、輸入物価の上昇が続いていることから、これを是正したいという思惑も大きかったようです。
12月の米国FOMCでは利下げを行いましたので、円高に向かうかに思えました。
しかし、実際は円高に向かうことはなく、18日は1ドル=155円台でしたが、19日夕方には157円台、26日には156円台となっており、円高へ向かうことはありませんでした。
これにより、輸入物価上昇による物価上昇は続きそうです。
たとえば、建築工事費における原材料費は上昇の可能性が高いでしょう。
このところの消費者物価指数(コア指数)は前年同月比3%前後の上昇率が続いており、物価上昇が一過性のものではないという認識が定着しました。
また、物価上昇が続いていることから、賃金の支給額(名目賃金)が増えています。長く続いた「物価と賃金、ともに横ばい基調」から、ようやく脱出し始めています。
0.75%になった政策金利ですが、これからのターミナルレートは1.5%程度ではないかと思われますが、少なくとも26年中には1%を超えることでしょう。
これまで、金利、インフレ率、賃金上昇率(名目賃金)、ともに0付近で推移していたものが、全て上昇基調にあることになります。多くの先進国では「あたりまえ」の状況になりつつあると言えるでしょう。
ただし、名目賃金をインフレ率で割った実質賃金は、2025年の1月以降10月分(執筆時最新)まで、全てマイナスとなっており、インフレ率に賃金増が追いついていない現状が伺えます。
住宅賃料は上昇傾向にありますが、その一方で住宅賃料の制約要因の1つである実質賃金の低下は、住宅賃料上昇のネガティブ要因となります。
実質賃金の上昇は、インフレ動向に多少遅れることが知られており、今後の動向が気になるところです。
10月分の結果は、名目賃金・実質賃金とも事前の予想を上回っており、また他の賃金に関するデータも改善していることから、期待が持てそうです。
政策金利が0.75%に引き上げられることが発表された19日には、長期国債金利が2%を超えました。長期国債金利が2%を超えるのは2026年ぶりで、こちらも大きなインパクトがありました。
長期国債金利は不動産投資におけるベース金利となりますので、期待利回りが上昇する可能性があり、そうなれば収益不動産の価格においてネガティブ要因となります。
東京(城南・城東エリア)のキャップレートは3.5%~3.7%台とされており、長期国債金利が2%を超えるということは、リスクフリーで2%のリターン(長期国債)がありますので、その差が縮まっており、「だったら、安全な国債投資へ」という思考の投資家も増えてくる可能性があります。
しかし、ここ数年は賃料も上昇していますので、それを期待する投資家もいると思われますので、市場とすれば、相殺する形になりそうです。
今後長期国債金利がさらに上昇する可能性がないとも言えず、また、実質賃金が上昇しなければ賃料の上昇可能性が減ることになりますので、予断を許さない状況と言えるでしょう。


不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。