2018年06月25日(最終更新:2023年05月30日)
家賃下落はキャッシュフローに大きな影響を与えます。1棟所有ならそのインパクトはとても大きいものになります。
1戸あたり9万円の家賃で総戸数が10戸のマンションの場合、家賃が1割減少した場合、年間100万円も家賃収入が減ってしまうことになります。
タイミングやエリアによって家賃が下落しやすいポイントがあります。それを事前に把握しておくことで、ある程度家賃下落リスクに備えることが出来ます。
ある程度物件が古くなったら家賃は下がってしまうのでしょうか。新築当初は「新築プレミアム」がつくことで、相場よりも高く貸すことが出来ます。
しかし、その世帯が退去してしまうと「新築プレミアム」は消えてしまいます。よって、同じ値段で貸すことが出来ず、家賃を下げざるを得なくなります。ここで、一度目の下落があります。その後、20年間ぐらいは下落が進んでいきますが、それ以降は大きく落ちることはないと言われています。
よって、注意が必要なのは、新築時の家賃設定でそのまま資金計画をしてしまうことです。これは非常に危険です。新築物件の場合は、周辺の競合物件で築年数と家賃の関係を見ながら、イメージしておくといいかもしれません。
物件選びの際には、そのエリアの賃貸需要をしっかり見極めましょう。
大学の近くの物件は、一見、賃貸需要が堅い印象があります。しかし、実際はどうなのでしょうか?例えば、2005年には東洋大学が文系5学部を都内白山キャンパスへ統合、また、2013年には青山学院大学の一部の各部が相模原キャンパスから青山キャンパスに移転するなど、近年、大学の都心回帰が活発になってきています。
すると、そのエリアの学生数が減少し、大学の周辺にあった学生向けの賃貸住宅への需要は大きく減少してしまいます。そうなると、空室が増え、入居者を取り合うために家賃下落をせざるを得ない状況に陥ってしまいます。
大学の移転だけでなく、企業(工場)の撤退など、ひとつの“理由”だけで大きな賃貸需要を期待できるエリアでの不動産投資は、その賃貸需要を作っている“理由”がなくなってしまった時のインパクトが大きくなります。こういったエリアでの物件購入は慎重に考えた方がよさそうです。
ここまでくると人口減少が賃貸需要減少、そこからの空室率上昇、家賃下落…というシナリオが成り立っているようですが、必ずしも人口減少=賃貸需要減少というわけではありません。言い方を変えれば、賃貸需要に大きな影響を与えるのは、人口ではありません。
それは、世帯数です。一般的には、1つの世帯に対して住宅は一つです。よって、世帯数を考えた方が、現実的だと言えます。次のグラフは、国立社会保障・人口問題研究所が推日本の将来世帯数予測です。
世帯数は人口ほど大きくは減少しないようです。さらに、単独世帯数は今後大きく増えると予測されています。
単独世帯増加の背景には、晩婚化、離婚率の上昇などがあります。実は、単独世帯の多くが賃貸住宅に住んでいるというデータがあります。
総務省統計局のデータによると、全国の単独世帯のうち62.4%が賃貸住宅に住んでいるようです。つまり、単独世帯数が今後上昇するということは、賃貸住宅に住む人の割合も増えていくということが言えそうです。
そして、エリアにもよりますが賃貸需要があるのは、ファミリー世帯よりも単独世帯のようです。都道府県別のデータは以下の通りです。
本統計は、市区町村ごとにもわかりますので、気になる方は総務省統計局の「住宅・土地統計調査」のデータより「家族類型(親族世帯/単独世帯)」と「住宅の所有の関係(持ち家/貸家)」を引用して作成してみてください。
ここまで賃料に影響を与える要素についていくつか見てきました。では、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。
まずは、賃貸需要が激変する可能性があるエリアでの不動産投資はそもそも避けましょう。具体的なエリアについては、ひとつの賃貸需要に頼っていないか、世帯数が減りそうにないかなどを中心に考えていきましょう。
次に、新築物件に関しては、当初は新築プレミアムがあるということを忘れずに、そのワードが使えなくなったあとのことも想定して資金計画をするようにしましょう。そして、新築物件に関してだけでなく、家賃に関しては近い将来下がってしまっても収支が狂ってしまわないように、資金計画をすることが重要です。
収益不動産ONLINE編集部
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