2023年03月10日(最終更新:2023年06月15日)
総務省が1月30日公表した2022年の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都は転入者数が転出者数を上回る「転入超過」が3万8,023人となり、外国人移動者を含めての統計が始まった14年以降で最少だった2021年の5,433人より大幅に増え、3年ぶりに転入超過が拡大しました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限が緩和され、移動が活発化したことが浮き彫りになっています。
2022年の東京都の人の動きについて、詳細を見ていきましょう。
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」以下同様
上のグラフは、2000年以降の東京都への転入者数と転出超過数の推移ですが、これを見れば、コロナ禍で状況が一変したことが一目瞭然です。
緑色で示した転入者数は、リーマンショック後の2009年~2010年より「やや少ない」という状況でしたが、コロナショックでは「東京都からの転出者が増えた」ため、水色で示した転出超過数は大幅に減少しています。
冒頭に、「転入超過が3年ぶりに拡大」とお伝えしましたが、コロナ禍以前の水準にはまだ戻ってはいない状態と言えます。
次に、東京都の人口移動状況を年齢別で見ていきましょう。
まず、転入者数では、25歳~29歳の転入が大幅に改善しました。2022年は前年より8.9%増加の107,472人でした。同様に、20~24歳、30~34歳、35~39歳でも、2021年よりも転入者が増えました。
転出者は20~24歳の転出が減少し2021年比でマイナス6.9%でした。移動のボリュームゾーンである若者世代の移動が転入では増え、転出では減った状況が転出超過数拡大の要因と言えそうです。
先日東京都より発表された「都民生活に関する世論調査」では、東京都全域に住む満18歳以上の男女を対象に郵送・インターネットでアンケートを実施し、1883人の回答をまとめたものです。
これによると、「今住んでいる地域に今後も住みたいと思うか」聞いたところ、「住みたい」は69.5%、「住みたくない」は11.3%となり、約7割の都民に定住意向があることが分かりました。
定住意向を男女別、年齢別で見てみましょう。
東京都「都民生活に関する世論調査」(令和4年6月実施)」より作成
男女の差は大きくないものの、若い世代では男女ともにまだ決めかねていることが分かります。前述の通り若い世代は東京都への流入者が多く、つまり、「東京以外の生まれ」である場合が多いためでしょう。
東京に定住したい理由をさらに、東京生まれでない人に限ると、「交通網が発達していて便利だから(81.3%)」が最も多く、次いで「東京に長く暮らしているから(38.4%)」「医療や福祉などの質が高いから(37.4%)」が挙げられていました。
その他にも「文化的な施設やコンサート・スポーツなどの催しが多いいから(34.2%)」「最新の情報が手に入り、流行の先端に触れることができるから(18.1%)」と「人間関係がわずらわしくないから(19.7%)」が多くなっていました。
一方で、「東京一極集中」の要因の一つとして、東京での就業や賃金の高さが挙げられることが多いのですが、調査結果では「仕事を見つけやすい、事業を起こしやすいから」は16.1%で、「文化的な生活」や「人間関係」などの方が、東京生まれでない人の定住意向に影響を与える要因になっていると言えそうです。
彼らの定住を左右するのは、実は「職」だけでなく「文化的な環境」も重要であることがこの調査から分かってきました。そして、東京への一極集中は進んでいくのか、その鍵を握るのはやはり若年世代だといえます。今後も人口推移に注目していきましょう。
収益不動産ONLINE編集部
収益不動産分野のシンクタンク「収益不動産総研」が運営しています。不動産投資に役立つあらゆる情報をお届けします。収益不動産をこれから購入する方、すでにお持ちの方が成功に近づくためのノウハウを提供しています。