2020年12月02日(最終更新:2023年06月13日)
サブリース契約は、賃貸住宅を所有した際に、オーナーはサブリース会社との間で賃貸借契約を交わし、入居者との間の契約はサブリース会社が行う契約のことです。
これまで、土地活用などで所有地に賃貸住宅を建てて賃貸住宅経営を行うオーナーが主に行っていましたが、最近では1棟モノの賃貸住宅を購入したオーナーやワンルームマンション1室を所有するオーナーもサブリース契約をする例も増えてきました。
サブリース契約は、どのようなタイプの賃貸住宅を所有するオーナーにとっても有益なサービスです。しかし、サブリース契約におけるトラブルは、以前から頻発していることも事実です。今回のコラムでは、サブリース契約について考えてみましょう。
サブリース契約のメリットは、なんといっても一定の家賃が安定して入ってくることです。賃貸住宅経営のリスクで最も大きな、空室リスクと賃料下落リスクを、サブリース契約期間中は回避することができます。そのため、収支シミュレーションが立てやすく、返済計画をはじめキャシュフロー計画が立てやすくなります。
また、サブリース契約では、基本入居者とのやり取り(賃料改修やクレーム対応、トラブル対応など)をはじめとした管理業務をサブリース会社に任せることになりますので、オーナーはサブリース会社とのやり取りだけを行えばいいわけです。
このようなメリットがあるサブリース契約ですから、賃貸住宅経営に時間を取られたくない方や、初めて賃貸住宅経営を行う方、もちろん安定収入を狙いたい方等にとってはとてもメリットのある契約形態だと思います。
言うまでもありませんが、一定のフィーを取られますから、「そんなお金は勿体ない」と考える方や、「時間がたっぷりあるから、入居者とのやり取りも親身に行いたい」という方には必要ないのかもしれません。
サブリース契約において注意しなければならないこともあります。さきほど、「契約期間内の空室リスクと家賃下落リスクの保証」と述べましたが、一定の契約期間(一般的には2~3年)をすぎれば、家賃の保証額の変更が行われ契約のまき直しが行われる可能性があります。
また、もっといえば再契約を行わない事例もあります。賃貸住宅経営のスタート時にサブリース契約を交わし、その際に「家賃保証制度があるから安心です」という謳い文句を安易に信じてしまわぬよう注意が必要です。
正しくは、「サブリース契約期間中は安心です」となります。しかし、このようなトラブルが多発していました。
こうした背景から、政府・国土交通省は、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年6月公布)」(サブリース新法)を制定しました。それに基づき、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が2020年10月16日に策定、公表されました。そして、いよいよ施行日である12月15日が近くなりました。
この度公表されたガイドラインは全37ページにわたり、かなりの文字数(図表とかは少なくほとんど全て文字です。)ですので、ここからは、要約してポイントのみお伝えします。
ガイドラインでは、サブリース契約において禁止されている「誇大広告」「不当勧誘」の説明と具体例を明確にしています。
「家賃保証」「空室保証」などと謳う文言には、「家賃の見直し」や「減額可能性があること」と明記すること。また、「サブリース契約の解除の可能性があること」ときちんと明示すること、などが例としてあげられています。
詳細は、国土交通省の報道発表資料をご確認ください。
参考:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。