2021年07月30日(最終更新:2023年06月14日)
2021年6月25日、2020年に調査を行った国勢調査の速報値が発表されました。今回はこの速報値をもとに首都圏への人口集中について解説してみたいと思います。
国勢調査は1920年(大正9年)に開始され5年に1度5の倍数の年に行われる、日本で最も重要とされている統計調査です。この調査は、日本人に加えて日本に住む外国人に対しても行われます。
調査集計項目は、人口・世帯数、その他として男女の別、出生の年月、就業状態、従業地または通学地、世帯構成、住居の種類、住宅の建て方などで、調査結果は、行政の政策、各種法令の制定その他様々な事に利用されます。(ここでは速報結果を用いて解説します。確定値がでると、若干修正される可能性もあります)
2020年10月1日時点における日本の人口(外国人含む)は、約1億2622万7000人で前回調査(2015年)に比べて約86万8000人減少しました。男性は約6136万人、女性は約6486万人と女性の方が約350万人多くなっています。これは、平均寿命の差だと考えられます。減少幅は、マイナス0.7%で前回の減少幅(2010-2015年)がマイナス0.8%でしたので、それよりも減少幅が小さくなりました。減少率の年平均は-0.14%となっています。
5年ごとでみる人口減少は2010-15年に続いて2回連続ということになります。前回の減少人口がマイナス約96万2000人でしたので実数でも減少幅が少なくなっています。これは外国人居住者が増えていることが要因のようです。
近年の国勢調査における人口集計の特徴は、大都市部への人口集中です。
東京都の人口は約1406万5000人で、これは全人口の11.1%を占めます。次に多いのが神奈川県で924万人です。1都3県では、埼玉県734万人、千葉県628万人となっており合計人口は3693.9万人、全人口の29.3%となっており、3割近くが首都圏に住んでいることになります。
また、1都3県に住む人は、この5年で約80万8000人増加しました。なかでも、東京都の2010-15年の人口増加数は35万5000人、率に換算するとは2.7%でしたが、2015-20の増加数は54万9000人で、率では4.1%となり、人口増加数、増加率とも大きく伸びました。
また、神奈川県も同様で、10-15年の増加数は7万8000人(+0.9%)でしたが、15-20では、11万4000人(+1.3%)となっています。1都3県すべてで、増加数、増加率とも大きく伸びています。
近年人口増加が目立っていた滋賀県や沖縄県、愛知県では人口増加の幅が小さくなり、勢いに陰りが見えた状況です。全国では、9都府県が人口増加で、残り38道府県の人口が減少しています。
このように、首都圏への人口集中が加速度的に進んでいることがうかがえます。
次に世帯の集計結果です。
2020年10月1日時点での日本の世帯数は約5572万世帯、この5年で約227万1000世帯増加しました。増加率はプラス4.2%となっています。
世帯数は、一貫して増加しており、前回(2010年―15年)の増加幅は2.9%でしたが、今回の増加幅は4.2%と大きくなりました。これは核家族化がさらに進み、加えて単身世帯がかなり増加していることが要因だと推測されます。1世帯当たりの平均構成数は2.27人となっており、一貫して減少しています。1995年調査で初めて3人を下回りましたが、この25年でさらに世帯構成人員が減っている状況が浮き彫りとなっています。
東京都の世帯数は、712万9000世帯で、15年からの増加数は51万8000世帯、増加率は7.7%と沖縄県に次いで2番目に高い増加率となっています。1都3県合計では1735万8000世帯で全国の世帯数のうち31.1%を占めています。世帯数においては、人口以上に首都圏に集中しているということになります。
東京都では1世帯当たり人員は1.95人と史上初めて2を下回り、東京に住む単身世帯の多さがうかがえます。就職・進学で東京への人口流入がますます増えているのはご存知のとおりで、こうした方々のほとんどがワンルームマンションを中心とした賃貸住宅に住んでいます。
また、東京を中心とした大都市圏では晩婚化、未婚化にも拍車がかかり、こうした方々の多くが賃貸住宅に暮らします。世帯構成人員の減少は、そのまま賃貸住宅需要の増加に結び付いているといえ、東京を中心とした1都3県つまり首都圏の賃貸住宅とくにワンルームマンション需要はますます高まるでしょう。
不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。