
2026年05月11日(最終更新:2026年05月11日)
不動産市況のトレンドを把握するうえで、「地価公示」は代表的な指標の1つとしてよく知られています。国土交通省によって毎年3月に公表される「地価公示」はニュースなどでも取り上げられる機会が多く、「地価が上がった」「下がった」といった形で、市況を把握する材料として活用されている方も多いと思います。一方で、同じく不動産市況を把握するための指標として「不動産価格指数」があります。こちらは「地価公示」ほどは、一般的に知られているわけではありませんが、投資判断や市場分析を行ううえで参考になる指標のひとつです。今回は、この不動産価格指数と地価公示の違いを整理しながら、不動産価格指数の最新データについて解説していきます。
不動産価格指数は国土交通省によって年間約30万件の実際の不動産取引価格のデータをもとに算出された指数であり、「いま市場でどの程度の価格で取引されているのか」という実勢を捉えやすい点が特徴です。不動産価格指数は、不動産価格動向のスピーディかつ的確な把握・公表を目的としていることから、国土交通省によって基本的に1カ月ごとあるいは四半期ごとの公表となっています。(公表データはリアルタイムのものではなく、公表日と対象期間に約3カ月程度のタイムラグがあるため、注意が必要です。) また、より実態に即した数値を把握できるよう、住宅や商業用不動産などの用途別、さらには全国や三大都市圏といった地域別に細かく確認することもできます。
これに対して地価公示は、不動産価格指数と同じく国土交通省によって公表されますが、毎年3月に1月1日時点における標準地の1㎡あたりの価格が不動産鑑定士による評価をもとに算出され、土地の適正価格を示す役割を担っています。このデータは不動産の価格を公平かつ客観的に把握することに役立つため、公共事業や不動産取引、税務評価の目安として広く活用されており、いわば地価の公的な“ものさし”のような存在であることが特徴です。
このように両者を比較すると、不動産価格指数は「実際の取引に基づく動的なデータ」、地価公示は「評価に基づく静的なデータ」であると整理することができます。さらに言えば、不動産価格指数は市場の“動き”や“変化のスピード”を捉えるのに適しており、地価公示はそのエリアの“基準となる水準”を把握するのに向いています。
この違いを踏まえると、以下のように使い分けることが可能となります。
・地価公示:エリアの適正水準や長期トレンドを見る
・不動産価格指数:足元の市況や変化のスピードを見る

(国土交通省より作成)
※住宅総合とは、住宅地・戸建住宅・マンション(主に中古を対象とした区分所有)で構成
※2010年を100とした季節調整済指数
※直近3カ月の数値は速報値
では、不動産価格指数はどのような推移を示しているのでしょうか。最新の2025年12月の数値は、住宅総合が148.0 (対前月比+0.5%)、住宅地が119.8(対前月比-1.1%)、戸建住宅が121.9(対前月比+1.2%)、マンション(区分所有)が225.1(対前月比+1.0%)でした。住宅総合で見ると、依然として上昇基調を維持していますが、マンション(区分所有)が上昇をけん引していることが分かります。マンション(区分所有)は10年前の2015年12月と比較して約1.8倍の伸びを示しており、中古区分マンション市場の堅調さをうかがうことができます。この要因として考えられるのが、まず、東京都をはじめとした都市部のマンション「需要>供給」が不動産価格指数の上昇を下支えしているということです。建設コストや建設資材の価格高騰、労働力不足を背景として、2026年は引き続き新築マンションの供給戸数が減少する可能性が高く、中古マンションの底堅い需要は続くと考えられています。中でも特に都心部のマンションは資産性が高く、実需だけでなく外国人投資家を含めた投資需要も集まりやすいため、価格が押し上げられやすい構造にあるということができます。また、住宅地・戸建住宅においては横ばいに近い緩やかな上昇をうかがうことができます。
不動産投資の判断をする上で合理的な判断を行うには、そのデータがどのような特性を持ち、なぜそのような推移を見せているのかを複合的に分析することが重要となってきます。また、「不動産価格指数」は用途別・地域別にも公表されていますので、ご自身の投資エリアに即したデータを参照することでより適切な投資判断に繋がると考えられます。


不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。