2019年06月13日(最終更新:2023年06月07日)
皆さんは相続税に対してどのようなイメージを持っていらっしゃいますか?高額で遺族に大きな負担がかかってしまう…、もしくは反対に、相続税を払うくらい資産を持っていない…と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は国税庁が公表している平成29年分の相続税の申告状況を見ていきたいと思います。
基本的な話からですが、相続税は遺産相続が基礎控除以下であれば相続税は課税されません。
基礎控除額は以下のように算出されます。
この基礎控除の額が大きいため自分にはあまり関係ないと思われている方も多いかもしれません。しかし、相続税の対象となる資産は現金だけではなく、不動産や有価証券なども含まれます。
都心などの地価の高いエリアの一戸建てを相続したとすると、評価額が思った以上に高く相続税が課税されてしまったというケースもよく見られます。
国税庁では毎年12月ごろ前年分の相続税申告状況を公表しています。平成29年分の申告状況を見ていきましょう。
(以下すべて国税庁資料より作成)
※「③課税割合」:実際に相続税の納税を行った被相続人の割合のこと。「被相続人数(死亡者数)÷「課税対象被相続人数」
※「⑤課税価格」:相続財産価額に相続時精算課税適用財産価額を加え、被相続人の債務・葬式費用を控除し、さらに相続開始前3年以内の被相続人等への生前贈与財産価額を加えたもの。
平成29年の相続税額の合計は2兆 185 億円、被相続人一人当たりでは1,807 万円でした。あまりの金額に驚いてしまいますが、あくまでもこれは平均値であり、多くの資産を残してお亡くなりになられた方の金額に引っ張られている可能性も念頭に置いておく必要がありそうです。
また、亡くなられた方のうち8.3%の方が相続税の課税対象となっていることが分かります。
8.3%というと、12人に1人の割合となります。これを多いと思うか少ないと思うかはそれぞれですが、いずれにせよ、「無縁」とは言えない水準でしょう。
ちなみに、この課税割合を都道府県別に見るとかなりばらつきがあります。
東京都は16.2%と、亡くなられた方の内6人に1人が課税の対象となっています。上位の東京都や愛知県などでは土地の値段が高いため、現金資産が多いというよりも土地が高い値段で課税対象となっている可能性が高いと見られます。
さらに、この課税割合は年々増加傾向にあります。以下は課税割合の推移を示しています。
平成27年で大きく上昇しているのは、「5,000万円+法定相続人の数×1,000万円」であった基礎控除が、現行の「3,000万円+法定相続人の数×600万円」に4割引き下げられたためです。
平成27年の基礎控除引き下げは「大増税」でかなりのインパクトがありましたが、相続税増税の流れは、今後もしばらく続きそうなので、気を抜くことが出来ません。
最後に課税対象となった資産の内訳を見てみましょう。
現金・預貯金の比率が増加傾向にあります。理由のひとつに、高齢者の方が現預金保有を好む傾向が強いことが挙げられます。
しかし、現金を相続すると、例えば1億円の現金なら丸々1億円に課税されてしまいます。一方で、土地や建物など不動産は相場より低い路線価などの評価額に対して課税され、さらに賃貸物件なら建物については「借家権割合」が適用され評価額を圧縮することが出来ます。ここに不動産投資のメリットがあるわけです。この点に関しては、別の機会に詳細をお伝えします。
今回は相続税の現状についてお伝えしました。これを見て、ハッとした方もそうでない方も、一度ご自身が関わる相続について確認してみてはいかがでしょうか?
収益不動産ONLINE編集部
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