2024年01月24日(最終更新:2024年01月24日)
「将来の日本の、そして各都市の人口・世帯数がどのような変遷をたどるのか」は住宅需要・賃貸住宅需要に大きな影響を与えます。将来人口・世帯数の推計は、国立社会保障・人口問題研究所が行っており、国の様々な政策(社会保険など)が編まれているようです。
今回の原稿では、23年4月と12月に公表された「将来推計人口」と「長期的な賃貸住宅需要」ついて解説します。
(注:以下の推計数字は出生中位、死亡中位のものです。)
将来推計人口は、5年に一度行われる国勢調査に基づいて、その概ね3~4年後に、国立社会保障・人口問題研究所(1939年に設立された厚生省人口問題研究所が源流)が推計を行い公表しているものです。前回結果は2015年の国勢調査に基づき2019年に推計されたもの、前々回は2010年の国勢調査基づき2014年に推計されたものとなっています。
23年4月26日に公表された「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、50年後の2070年には、総人口(在留外国人を含む、以下同じ)が現在から3割減少し、20年国勢調査では1億2615万人が70年には8700万人になる推計となっています。減少スピードは前回推計(2015年の国勢調査をもとに2019年に推計したもの)よりも、わずかに緩むものの、かなりインパクトある推計となっています。ちなみに、日本の人口が1億人を割るのは、2065年ごろと見込まれています。
また、2070年には65歳以上の高齢者は、およそ4割を占めるようになります。先進国でも最も高齢化が進んでいる日本ですが、その傾向がいっそう顕著になる見通しです。
日本全体の将来推計人口の公表から8カ月後の23年12月22日には、「地域別将来推計人口」が同研究所より発表されました。この推計は、2020年に行われた国勢調査をもとに、2050年までの向こう30年間を5年刻みで推計が行われました。向こう30年(2050年まで)の推計は、都道府県別で大きな差が出る結果となり、東京の強さが浮き彫りになっています。
2015年の国勢調査から2020年の国勢調査間には、39の道府県で人口が減少しました。次回の国勢調査の年である2025年までの5年間には、東京都を除く46の道府県で人口が減少すると推計されています。
東京都は25年以降も人口が増え続ける唯一の都市で、20年を100とすれば35年は102.9、50年には102.5となります。東京都の人口のピークは、2040年~45年の間と見込まれています。ちなみに、大阪府ではすでに減少は始まっており、20年を100としてみれば、50年には82.2となります。
出典:日本の地域別将来推計人口 令和5(2023)年推計
全国人口に占める東京の割合は、2020年時点では11.1%ですが、5年ごと刻み(国勢調査ごと)でみれば毎回増え続け、2040年には12.9%、2050年には13.8%にまでなります。
1都3県(東京・埼玉・千葉・神奈川)のうち、2025年以降も人口が増え続けるのは東京都だけですが、他の地域に比べ減少がすくないため、1都3県(本推計では南関東と表記されています)の人口割合は増え続けます。
1都3県に住む人口割合は、2020年時点では29.3%、2025年には30.0%と3割を超え、2040年には33.7%となります。ちなみに、北関東(茨城・群馬・栃木)を含めた関東全体では、2040年には38.7%と4割近い割合となります。
このように、首都圏一極集中は、(現状から大きな変化がないとすれば)ますます進むことが確実のようです。また、生産年齢人口とよばれる15-64歳(賃貸住宅需要の中心)は2000年を100とすれば、40年に100を超えるのは唯一東京都だけとなります。また、地域ブロックでみれば、15-64歳人口は1都3県では、20年は31.1%ですが、40年には34.4%と増えており、他の地域では、40年の推計では多くても17%台(近畿ブロック)ですので、首都圏の割合の圧倒的な多さが分かります。
この将来人口の推計をみれば、賃貸住宅需要を長期的に安定的に維持できるのは、首都圏だけ、と言っても過言ではないのかもしれません。
不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。立教大学大学院 博士前期課程修了。(株)船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディー・サイン不動産研究所 所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は年間30本を超える。
著書: 「データで読み解く賃貸住宅経営の極意」(芙蓉書房出版)、「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)、「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等10冊。多数の媒体に連載を持つ。